めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2023年9月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.超短編双玉詰将棋コンクール 出題

担当:駒井めい

超短編の双玉詰将棋を対象としたコンクールを開催中です。
計12作を出題し、現在解答を募集しています(解答締切:2023年9月30日)。
詳しくは本誌2023年8月号をご覧ください。

meimaga.hatenablog.com

2.Orthodox・Helpmate 解付き

担当:駒井めい

チェス・プロブレムのOrthodoxやHelpmateを解付きで出題するコーナーです。
出題する作品を募集していましたが、残念ながら投稿はありませんでした。

作品の投稿がない状態が続いており、コーナーを継続するのは難しいとの結論に至りました。
つきましては、「Orthodox・Helpmate 解付き」のコーナーは終了とさせていただきます。
これまでご愛読いただき誠にありがとうございました。

3.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① 新田道雄 作

詰パラ 1974年4月
詰将棋 7手

14飛成、同玉、12飛、24玉、25金、同玉、15飛成
迄7手

初手25金に

2手目25同玉は

3手目15飛成で詰みます。

しかし、初手25金に対して

2手目33玉とかわされると詰みません。

以下、34金 32玉で逃れています。

初形に戻ります。

攻方11飛がもし12の地点にあったらどうでしょう。

初手25金に

2手目25同玉は3手目15飛成で詰み。
2手目33玉は

3手目34金で詰みます。

攻方11飛配置との違いは、二段目に攻方飛が利いていることです。

初形に戻ります。

攻方の持駒に飛車があることを活かして、攻方飛の打替えを考えてみます。
まずは初手14飛成と攻方飛の消去を試みます。

2手目14同玉に3手目12飛と進めたいところです。
その前に2手目33玉や35玉と指されても大丈夫か見てみます。

2手目35玉と攻方歩を取りながら逃げるのは、

3手目25飛迄の詰み。

初手14飛成迄の局面に戻ります。

2手目33玉はどうでしょうか。
先程から問題になっている逃げ道です。

結論から言うと、3手目34龍以下詰んでいます。

4手目42玉は

32飛 51玉(or41玉) 52金迄7手駒余り。

2手目33玉に3手目34龍迄の局面に戻ります。

4手目22玉は

32飛 13玉(or11玉,21玉) 12金迄7手駒余り。

初手14飛成迄の局面に戻ります。

2手目35玉と33玉は7手駒余りで詰むことが分かりました。
残すは2手目14同玉。

3手目12飛と打ち替えるのが指したかった手。

4手目13歩と合駒をするのは5手目15金迄で詰みます。

3手目12飛迄の局面に戻ります。

4手目25玉には5手目15飛成迄の詰み。
4手目は24玉と寄るのが最善の受けです。

これで初形から攻方11飛を12の地点に打ち替えた局面が実現できました。

5手目25金と捨てる手に

6手目33玉は7手目34金迄で駒余りの詰み。

5手目25金迄の局面に戻ります。

6手目25同玉が正解で、7手目15飛成迄で詰みます。

初形に戻って手順を振り返ります。

14飛成、(イ)同玉、12飛、(ロ)24玉、
25金、(ハ)同玉、15飛成 迄7手

(イ)
・2手目35玉は25飛迄。
・2手目33玉は34龍、22玉、32飛、13玉、12金迄同手数駒余り。
(ロ)
・4手目13歩は15金迄。
(ハ)
・6手目33玉は34金迄同手数駒余り。

本作は飛車を打ち替える作品。
打ち替えた後の飛車も活用されて、手順に一貫性があります。
飛車を打ち替える理由が変化に隠れているのが、作意の不思議さを際立たせています。
切れ味鋭い超短編

② 上谷直希 作

詰パラ 第44回神無一族の氾濫 2016年6月
強欲詰 11手

出題・結果発表:神無一族の氾濫再録

【 強欲 】
駒を取る手を優先して着手を選ぶ。

47銀、同龍、45銀、同玉、44銀成、同玉、
36桂、同龍、34桂、同玉、43飛成
迄11手

普通の詰将棋に「強欲」という変則ルールが課されています。
駒を取る手を優先し、それ以外は普通の詰将棋のルールに従います。

初手45銀と指した局面を見てください。

受方はどう受ければよいか。
強欲ルールがあるので、受方は2手目45同玉と攻方銀を取ります。

そして、強欲ルールの影響で攻方は3手目54桂と受方歩を取ることになります。

受方は4手目54同玉と攻方桂を取ります。

この展開は受方玉が詰みません。

2手目45同玉迄の局面に戻ります。

もしこの局面だけ強欲ルールがない普通の詰将棋なら、攻方は指したい手があります。
それは3手目34桂。

強欲ルールがある状況に戻します。
受方は駒を取る手を優先するので、指すとしたら4手目34同玉か49龍のどちらか。

4手目34同玉と攻方桂を取るのは

5手目43飛成・44飛・24角成といった手で詰みます。

3手目34桂迄の局面に戻ります。

ここでは4手目49龍と攻方飛を取る方が受方玉は延命できます。

5手目57桂(or37桂)に

6手目34玉と攻方桂を取ります。

7手目24角成といった手で詰みます。

初形に戻ります。

受方玉を34の地点に誘導できれば、詰ませられそうだと分かりました。
しかし、34桂と右に跳ねたいところで、54桂と左に跳ねて受方歩を取る手が優先されるのが問題です。
これを解決するのに受方54歩を予め動かすのはやってみたいですが、どうにも難しそうです。
54桂を回避して34桂を実現する方法はあるのでしょうか。

初形に戻ります。

もし攻方33銀がいなかったらどうでしょうか。

この意味は初手から45銀 同玉と進めてみると分かります。

攻方33銀がいないことで、攻方王に逆王手が掛かっています。
3手目54桂と受方歩を取る手を指してみます。

攻方は自玉(攻方王)に掛かっている王手を放置していることになります。
このように駒を取る手を指すと反則になる場合はどう考えたらよいでしょうか。

ここで強欲ルールの説明を思い出してください。
「駒を取る手を”優先”して着手を選ぶ」でした。
「優先して選ぶ」のであって、「絶対に選ぶ」わけではありません。
強欲ルール抜きの状態で合法的に指せる手の中に「駒を取る手」があったら、それを選ぶルールなのです。
「自玉に掛かっている王手を解除する」のは最優先されるべき着手なので、
・自玉に掛かっている王手を解除し、かつ駒を取らない
・自玉に掛かっている王手を放置し、かつ駒を取る
という2つの着手があったら、前者が選ばれることになります。

2手目45同玉と指した局面に戻ります。

従って、この局面では3手目34桂と駒を取らない手を選ぶことができます。

攻方はわざと自玉(攻方王)に王手を掛けさせれば、駒を取らない手を選べるのです。

初形に戻ります。

攻方王に王手を掛けさせる準備として、攻方33銀を消去する方法を考えます。
どこかで44銀不成か44銀成と捨てるのが有力です。

44銀成を実行するために、初手から45銀 同玉と進めてみます。

この局面で攻方は3手目44銀成を指せるでしょうか。
前述したように、ここでは3手目54桂と受方歩を取る王手を優先することになります。
仮に受方54歩がなかったとしても、3手目44銀成を指すと受方38龍の利きが攻方王に当たってしまいます。

初形に戻ります。

これらの問題を解決するのが初手47銀。

強欲ルールがあるので、受方は2手目47同龍と応じるしかありません。

代えて2手目26玉などと逃げたくても、駒を取る手ではありません。
2手目47同龍という王手を解除しながら駒を取る手がある以上、これが優先されます。

この序の2手には
・受方龍を3筋からずらす
・攻方49飛の利きを遮る
という2つの目的があります。
後にどういう効果をもたらすのか、手順を進めてみましょう。

3手目は45銀。

受方は強欲ルールの影響で4手目45同玉と応じることになります。
他の王手解除手段は駒を取らない手です。

先程は受方玉を4筋に呼ぶと、強欲ルールの影響で54桂と受方歩を取る王手を選ぶしかありませんでした。
攻方49飛の利きを受方龍で予め遮っておいたおかげで、5手目54桂が受方玉への王手になりません。

攻方には王手義務があります。
いくら駒取りでも王手でない手は選べません。

4手目45同玉の局面に戻ります。

この局面で攻方には受方玉への王手で、かつ駒取りという手はありません。
従って、攻方は駒を取らない王手を選べます。
5手目44銀成が指したかった手。

序の2手で受方龍を3筋から退かしたおかげで、今度は問題なく指せます。

6手目は44同玉の一手。
王手を解除する手で駒を取る手はこれだけです。

34桂と攻方桂を右に跳ねるのがやりたかった手。
攻方桂を跳ねた手を王手にするには、受方47龍を4筋から退かす必要があります。
ただ、何も考えずに4筋から退かしたのでは、54桂と左に跳ねて受方歩を取る手を指すことになります。
攻方は自玉(攻方王)に王手を掛けさせれば、34桂と右に跳ねる手が選べることを思い出してください。
つまり、7手目は36桂。

受方は8手目36同龍と応じるしかありません。

攻方王に王手が掛かっています。
9手目54桂は駒を取る手ですが、自玉(攻方王)に掛かっている王手を放置しています。
王手を解除する手は最優先なので、9手目は34桂と駒を取らない手を選べます。

10手目は34同玉と攻方桂を取りながら逃げます。

11手目43飛成と飛車を成って詰上り。

初形に戻って手順を振り返ります。

47銀、同龍、45銀、同玉、44銀成、同玉、
36桂、同龍、34桂、同玉、43飛成
迄11手

本作は攻方が相手玉(受方玉)を詰ますために、わざと自玉(攻方王)に逆王手を掛けさせます。
攻方にとって逆王手を掛けさせることが、純粋な得になっているのが興味深いところです。

③ Friedrich Freiherr von Wardener 作

Deutsches Wochenschach 1904年

Mate in 3

ビューアで鑑賞:https://yacpdb.org/#49384

【 Mate in n (#n) 】
白から指し始め、黒がどのように応じてもn手以内で黒のキングをメイトする。
詰将棋と異なり、白にチェックする義務はない。

1.Ba4? (threat: 2.Rc6#)
 1...f6! 2.Rxf6?(stalemate)

1.Ra6? (threat: 2.Ba4~3.Rc6#)
 1...f5! 2.exf6 e.p.?(stalemate)

1.Rd6! (threat: 2.Ba4~3.Rc6#)
 1...f5 2.exf6 e.p. Kxd6 3.Qe7#

白は黒キングをメイトするのが目的。
対して黒はメイトされないように抵抗します。
詰将棋と違って、白にチェックする義務はありません。
白はチェックでない手を指してもよいということです。

黒キングをメイトしたいので、黒キングがどのような状況か確認しておきます。

黒キングはc5の地点にいて、逃げ道はありません。
もう一息という感じです。
1.Rc6はどうでしょうか。

今動かした白ルークがe8の白ビショップの利きを遮っています。
1...Kb5と逃げる余地が生じてメイトになっていません。

以下は黒キングをメイトする手順があるものの、指定手数を超えてしまいます。

初形に戻ります。

e8の白ビショップの利きが遮られないように、1.Ba4と動かしておくのはどうでしょう。

次に白が2.Rc6と指せれば、黒キングがメイトされます。

1.Ba4と指した局面に戻ります。

ここで黒に抵抗する手段はあるでしょうか。
そもそもの話として、この局面で黒が動かせるのはf7の黒ポーンしかありません。
黒が指せる手は1...f6か1...f5の2つだけだと分かります。

1...f5は

予定通り白が2.Rc6と指せて、黒キングがメイトされます。

1.Ba4と指した局面に戻ります。

代えて黒が1...f6とするのはどうでしょうか。

h6の白ルークの利きを遮って、白が2.Rc6と指すのを防いでいます。

ただ、2.Rxf6と黒ポーンを取ってしまえば、3.Rc6のメイトを再度狙えます。

しかし、2.Rxf6と指した局面で、黒は何を指したらよいでしょうか。
そうです。ここで黒が合法的に指せる手がなく、ステイルメイトになってしまいます。

1...f6と指した局面に戻ります。

白はこのf6の黒ポーンを取れないわけです。
2.Rg6などと手待ちをしても、

白ルークの利きが遮られているために、2...Kb6と逃げられます。

初形に戻ります。

先に1.Ra6を入れておくのはどうでしょうか。

f7の黒ポーンが白ルークの利きを遮るのを予め防いでいます。
従って、黒が1...f6とするのは

2.Ba4 f5 3.Rc6で黒キングがメイトされます。

1.Ra6と指した局面に戻ります。

ここで黒が1...f5とする展開は大丈夫でしょうか。

2.Ba4に対する2...f4が白キングへのチェックになっています。

3.Rc6が指せれば黒キングがメイトされます。
しかし、白は味方のキング(白キング)に掛かっているチェックを放置するわけにはいかないので、3.Rc6は指せません。

1.Ra6に1...f5と進めた局面に戻ります。

白キングに向かって伸びてきたf5の黒ポーンを、2.exf6 e.p.とアンパッサン(en passant)で取るのは、

やはり黒がステイルメイトになってしまい失敗。
とにかくステイルメイトになってしまうのが厄介なのです。

初形に戻ります。

色々と試してきましたが、1.Rd6と指すのが正解。

相変わらず白は2.Ba4~3.Rc6を狙ってします。

従って、1.Rc6に対して黒は1...f5と抵抗します。

2.Ba4は2...f4とされて白キングにチェックが掛かります。

白は味方のキング(白キング)に掛かったチェックを放置するわけにはいかないので、3.Rc6を指すことができません。

1...f5と指した局面に戻ります。

白キングへのチェックを防ぐには、f5の黒ポーンを取るしかありません。
2.exf6 e.p.とアンパッサンで取ることになります。

1.Ra6とした先程の手順ではステイルメイトになってしまいました。
1.Rd6から進めたこの手順はどうでしょうか。

2...Kxd6と白ルークを取る手を指すことができます。

これが白が1手目で1.Rd6と指した意味です。
3.Qe7と白クイーンを活用すれば、黒キングがメイトされます。

初形に戻って手順を振り返ります。

1.Ba4? (threat: 2.Rc6#)
 1...f6! 2.Rxf6?(stalemate)

1.Ra6? (threat: 2.Ba4~3.Rc6#)
 1...f5! 2.exf6 e.p.?(stalemate)

1.Rd6! (threat: 2.Ba4~3.Rc6#)
 1...f5 2.exf6 e.p. Kxd6 3.Qe7#

本作はステイルメイトをめぐる攻防が面白い作品。
1.Rd6!と指した瞬間は白ルークに紐が付いていて、後の展開で紐が外れるのも巧妙な作りです。

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