めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2023年8月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.超短編双玉詰将棋コンクール 出題

担当:駒井めい

超短編の双玉詰将棋を対象としたコンクールを開催します。
3つの部門に分けて実施し、計12作を出題します。
解答を募集しますので、よろしくお願いします。
結果発表は本誌10月号(普通詰将棋部門)及び11月号(ビギナー部門・協力詰部門)で行います。

1.1 出場者

出場者は以下の通りです。

(1) ビギナー部門
・堺健太郎
・羽毛布団
以上2名、敬称略 

(2) 普通詰将棋部門
・武田裕貴
・シナトラ
・久保紀貴
・negitarou
springs
・山咲優
以上6名、敬称略

(3) 協力詰部門
springs
・駒井めい
・馬屋原剛
やべっち
以上4名、敬称略

公平を期すために、作者名を伏せて出題します。
結果発表時に作者名を公開します。

1.2 順位付け方法

解答者の方は、各作品に1~5の五段階評価(5が最も良い評価)も付けてください。
誤答・無解の場合、その評点は無効といたします。
各部門において評点の平均値が最も高かった作品を優勝とします。

1.3 解答要項

以下の内容を担当の駒井めいまで送付してください。

・解答者名(ペンネーム可)
・解答
・短評
・評点(1~5の五段階で、5が最も良い評価)

送付先:meikomaivtsume[at]gmail.com
解答締切:2023年9月30日

詰将棋解答ソフトの利用について
短評を書くために自力で解答せず、詰将棋解答ソフト(柿木将棋、脊尾詰、fmzaなど)を利用するのは、当コンクールに限り許可します。
その場合、ソフトを利用した作品は無解として、ソフトを利用した旨をお書きください。
但し、ソフトを利用した作品の評点は無効としますので悪しからず。

1.4 出題

(1) ビギナー部門(詰将棋 7手以内)

第 1 番 詰将棋

第 2 番 詰将棋

(2) 普通詰将棋部門(詰将棋 7手以内)

第 3 番 詰将棋

第 4 番 詰将棋 b) 先後反転

(補足説明)
a)は通常通り先手が後手玉を詰ましてください。
b)では先後を反転、つまり後手が先手玉を詰ましてください。
このとき、先手と後手の持駒を入れ替えてください(後手:飛角金、先手:残り全部)。

第 5 番 詰将棋

第 6 番 詰将棋

第 7 番 詰将棋

第 8 番 詰将棋

(3) 協力詰部門(協力詰 7手以内)

【 フェアリールールの説明 】
・協力詰
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。
無駄合の概念はなく、合駒は全て有効。
・受先
受方から指し始める。 
・n 解
解が複数あり、指定された n 個の解を求める出題形式。 

第 9 番 協力詰 4手(受先、2解)※受方持駒なし

第 10 番 協力詰 5手

第 11 番 協力詰 7手

第 12 番 協力詰 7手 ※受方持駒なし

2.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

László Lindner 作

Clube de Xadrez São Paulo 1957年 1st Prize

Helpmate in 2, 1 set play

ビューアで鑑賞:https://www.yacpdb.org/#44131

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングをメイトする。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白にチェックする義務はない。

1...Qxg1 2.e1=S fxg3#
1.cxd1=S Kb1 2.Se3 fxg3#
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

白は黒キングをメイトするように攻めます。
通常のMate(Orthodox)では黒は自身のキング(黒キング)がメイトされないように抵抗します。
Helpmateでは黒は自身のキング(黒キング)がメイトされるように白に協力します。
白と黒はどちらも黒キングをメイトするのが目的というわけです。

チェスでは通常白が先手ですが、Helpmateでは基本的に黒から指し始めます。
本作は「Helpmate in 2」なので、2手でメイトする手順があります。
つまり、黒→白→黒→白という順番で指して黒キングをメイトします。
詰将棋と違って白にチェックする義務はないことにもご注意を。

改めて初形を示します。

メイトしたい黒キングにどれくらい逃げ道があるか確認しておきます。
よく見ると黒キングに逃げ道はなく、もう一息という感じがします。
白の手番だと仮定して何らかのチェックを掛けてみます。

1...Qd2はどうでしょう。

これは2.cxd2と黒ポーンで取られてしまいます。

初形に戻ります。

これを防ぐためには、初形のc3の黒ポーンを予め退かす必要があります。
b2の地点に白駒を持ってきてcxb2と取らせることになります。
しかし、b2の地点に移動させられる白駒はなさそうです。

では、1...Bxg3はどうでしょうか。

h4の白ビショップを動かしたことで、g5の地点への利きが外れています。
従って、2.Kg5と逃げられます。

初形に戻ります。

これを防ぐにはg5の地点に
・別の白駒を利かせておく
・黒駒を運んで封鎖しておく
のどちらかが事前工作として必要になります。
初形のg1の黒ナイトをg1→h3→g5という経路で動かすのが有力そうです。

しかし、黒ナイトでh3の白ポーンを取ることになるので、g4の地点への利きがなくなってしまいます。
1.Sxh3~2.Sg5としてから2...Bxg3を実行しても、

3.Kg4と逃げられてメイトになっていません。

初形に戻ります。

1.fxg3はどうでしょう。

初形のf2の白ポーンを動かしたことで、e3の地点への利きが外れています。
従って2.Ke3と逃げられます。

初形に戻ります。

これを防ぐにはe3の地点に
・別の白駒を利かせておく
・黒駒を運んで封鎖しておく
のどちらかが事前工作として必要になります。

一番シンプルなのが1...Qxg1~2...fxg3。

この手順ができれば黒キングはメイトします。
では、黒は何を指したらよいでしょうか。
黒は余計なことをしない、つまり手待ちができればよいことになります。

出題図は黒の手番ですが、白の手番と仮定して1...Qxg1と指した局面を見てみます。

ここで黒が手待ちできればよいわけです。
黒が動かせる駒は
・b3の黒ポーン
・e2の黒ポーン
・g3の黒ポーン
に限られます。

2.gxf2は次に動かしたかった白ポーンを取ってしまうので論外。

代えて2.b2は白キングにチェックが掛かってしまいます。

これでは白が次に2...fxg3と指す余裕がありません。

一旦1...Qxg1と指した局面に戻ります。

2.e1はどうでしょうか。

e1に動いた黒ポーンはプロモーションしなければなりません。
何の駒にプロモーションしたらよいでしょうか。

2.e1=Rとルークにプロモーションをするのは、白キングにチェックが掛かります。

これでは白が次に2...fxg3と指す余裕がありません。
同様の理由で2.e1=Qとクイーンにプロモーションをするのもダメです。

2.e1=Bとビショップにプロモーションをするのは、白キングにチェックが掛からないので良さそうに見えます。

しかし、2...fxg3と指したときに、

3.Bxg3とチェックを解除できるので、メイトになっていません。

2.e1=Sとナイトにプロモーションをするのが正解。

2...fxg3を実行すれば黒キングがメイトします。

初形に戻ります。

この局面を白の手番と仮定した場合のメイト手順を今見ました。
実際には黒の手番です。
ここで黒が手待ちできれば、今見た1...Qxg1 2.e1=S fxg3#の手順に合流します。
結論から言うと、この局面で黒が手待ちする手段はありません。

例えば、1.e1=Q Qxe1と進めるのは、

次に白が2...fxg3とできればメイトです。
しかし、ここで黒が手待ちする有効な手段がありません。
黒は1手手待ちできるものの、2手手待ちする手段がないのです。
従って、黒から指し始めるこの状況では、別の手順を模索することになります。

何を目指すか確認しておきます。
白がfxg3と指す手に対して、黒キングがKe3と逃げられなければよいです。

今度はe3の地点に黒駒を運んで、予め黒キングの逃げ道を封鎖します。

初形に戻ります。

1.e1=R~2.Re3は有力そうに見えます。

しかし、1.e1=Rと指した局面が問題です。

黒が2.Re3としたのを見てから、白は2...fxg3を実行したいです。
従って、この局面で白には手待ちが求められます。
白から指し始めた先程の手順では黒に手待ちが求められましたが、逆のことが起きているのです。
ただ、ここで白が手待ちできる有効な手段はなく、上手くいきません。

初形に戻ります。

正解は1.cxd1=Sと白クイーンを取りながら黒ナイトにプロモーションをする手。

黒は次に2.Se3と黒キングの将来の逃げ道を封鎖する手を狙っています。

やはりここで白に手待ちが求められます。
初形のc2の黒ポーンが動いたのが大きく、b1の地点への利きが外れています。
従って、白は1...Kb1と手待ちすることができます。

狙い通り黒は2.Se3と指して、

白が2...fxg3を実行すれば黒キングがメイトします。

初形に戻って手順をおさらいします。

1...Qxg1 2.e1=S fxg3#
1.cxd1=S Kb1 2.Se3 fxg3#

本作は
・白から指し始めると黒が手待ちをする
・黒から指し始めると白が手待ちをする
という実に不思議な手順構成を実現しています。
これは「黒は1手手待ちできるものの、2手手待ちする手段がない」という状況によって生み出されています。

3.掲載記事の募集

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