めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2024年3月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① はせがわゆ 作

つみき書店HP 詰将棋つくってみた 課題18 2022年6月1日
詰将棋 9手

出題:詰将棋つくってみた(84) 課題18:解答募集 | つみき書店
結果発表①:詰将棋つくってみた(86) 課題18:結果発表(前編) | つみき書店
結果発表②:詰将棋つくってみた(87) 課題18:結果発表(後編) | つみき書店
講評:詰将棋つくってみた(88) 課題18:結果発表(講評) | つみき書店

53馬、同玉、64角、44玉、55角、同香、
45歩、53玉、65桂 迄9手

初手45歩は打歩詰のため指せません。

実は攻方86馬が53の地点に利いているのが余計です。
もし攻方86馬がいなければ、初手45歩が打歩詰になりません。
2手目53玉に3手目65桂と進めて詰みます。

初形から攻方86馬を消去する方法はあるでしょうか。

初形に戻ります。

初手53馬と馬を捨てる手が正解です。

53の地点は受方駒が3枚(41桂・44玉・52香)利いています。

2手目53同桂は

56桂、同香、55角迄5手駒余りの詰み。

2手目53同香は

42飛成、同銀、22角、33飛、36桂、34玉、35香迄9手駒余りの詰み。

初手53馬と指した局面に戻ります。

2手目は53同玉が最善です。

これで初形から攻方86馬を消去することに成功しました。
しかし、3手目65桂は4手目44玉で再び打歩詰の局面になってしまいます。

53の地点に攻方駒を利かせないように、受方玉を44の地点に呼び戻す必要があります。

2手目53同玉と指した局面に戻ります。

3手目44角と捨駒をするのはどうでしょうか。

4手目44同飛や同銀は5手目65桂迄5手駒余りの詰み。

4手目44同玉は45歩、53玉、65桂迄7手の詰み。

3手目44角に対して

4手目44同香とされるとどうでしょうか。

42の地点が空いたことで、5手目65桂に6手目42玉と逃げられて詰みません。

2手目53同玉と指した局面に戻ります。

3手目に44角と指すのは上手くいかないことが分かりました。
3手目は64角が正解です。

4手目は44玉と指すしかありません。

これで初形の攻方86馬を64角に打ち替えた局面になりました。
せっかく初形から攻方馬を消去したのに、すぐに攻方角を設置するのは何故なのでしょうか。
再び45歩が打歩詰になってしまいました。

5手目55角と指せるのがポイントです。

この手を指すために玉の近くに打ち替えたわけです。

6手目53玉は7手目65桂迄7手駒余りの詰み。

5手目55角に対しては

6手目55同香が最善です。

初形から攻方86馬を消去した局面になりました。

これで7手目45歩が打歩詰になりません。

8手目53玉に9手目65桂迄で詰上り。

初形に戻って手順を振り返ります。

53馬、同玉、64角、44玉、55角、同香、
45歩、53玉、65桂 迄9手

本作は打歩詰を打開するために、邪魔な攻方馬を消去する構成。
受方玉を元の地点に戻すのに、攻方角に打ち替える展開は意外性があります。
初手の馬捨ても受方駒が3枚利く地点の焦点捨てになっていて、とても感触が良いです。

② 神無七郎 作

Onsite Fairy Mate 第134回 2008年4月13日
詰将棋 16手(受先)

出題・結果発表:http://k7ro.sakura.ne.jp/solve/solution.html

【受先】
受方から指し始める。

18香成、27飛、15玉、16歩、同玉、17歩、
同成香、26飛、15玉、16歩、同成香、25飛、
14玉、15歩、同成香、24飛 迄16手

受方から指し始めることを除けば、ルールは普通の詰将棋と同じです。
変則ルールを使っていることには変わりありませんが、ルール変更の程度は軽微です。
ただ、「どちらから指し始めるか?」というのは、手順に大きな影響を与えます。

ポイントは攻方の王手義務です。
普通の詰将棋は攻方から指し始めるので、受方の指し手は王手に対応する手に限られます。
しかし、本作は初形で受方玉に王手が掛かっておらず、受方から指し始めます。
受方は初手に限り、指せる手が多くなります。

出題図を再掲します。

受方から指し始めると言われても、着手の自由度が高くて分かりにくいかもしれません。
詰将棋なので当然受方は詰まないように抵抗します。
受方が手待ちをしたときに、攻方にどのような攻めがあるかを確認してみます。

例えば、初手91歩と如何にも意味がなさそうな手を指してみます。

2手目24飛の両王手が強烈で、一発で詰みます。

初形に戻ります。

受方としては攻方に24飛とされても詰まないようにする必要があります。
受方15香を動かすしかありません。
例えば、初手16香として15の地点を空ければ、

2手目24飛には3手目15玉とかわすことができます。

受方が初手16香と指した局面に戻ります。

2手目15歩は打歩詰のため指せません。
2手目は27飛と引けば解決します。

3手目15玉には4手目24銀迄で詰みます。

2手目27飛と引いたのは、5手目26玉と逃げられないためです。
代えて2手目26飛だと、ここで5手目26玉と攻方飛を取られます。

攻方が2手目27飛と指した局面に戻ります。

3手目25歩と合駒をして受けるのはどうでしょうか。

これは4手目25同角

5手目15玉

6手目24銀

7手目24同玉

8手目43角成

9手目14玉

10手目25馬迄で詰みます。

初形に戻ります。

初手16香ではなく、17香ともっと遠くへ動かすのはどうでしょうか。
このとき、香を成るか成らないかの選択がありますが、とりあえず初手17香不成で考えてみます。

先程は2手目27飛としたが、今度は2手目28飛とします。

3手目15玉には

4手目24銀

5手目16玉

6手目25角迄で詰みます。

初手17香不成に2手目28飛と指した局面に戻ります。

3手目25歩と合駒をするのは、

同角、15玉、24銀、同玉、43角成と進めます。

以下、14玉、25馬迄で詰みます。

ただ、8手目43角成と指した局面で、受方17香が成香だったらどうでしょうか。
つまり、初手17香”不成”ではなく、17香”成”と指したということです。

これなら8手目43角成に対して9手目28成香と攻方飛を取れて詰みません。

初形に戻ります。

初手17香成に対して

2手目28飛は上手くいかないことが分かりました。
2手目15歩は打歩詰なので、やはり攻方25飛を動かして開王手をするしかありません。

今度は2手目26飛とするのが解決策です。

3手目15玉には

4手目16歩と打てます。

初手17香”不成”からこの進行で進めても、4手目16歩が打歩詰になります。
初手17香”成”なら、4手目16歩に対して5手目16同成香と取れます。

打歩詰にならないことを活かした飛車の引き場所というわけです。
以下、25飛、14玉、15歩、同成香、24飛迄で詰みます。

受方がこの筋で受けるなら、初手17香成ではなくもっと奥に動かせば、より延命できそうです。

初形に戻ります。

思い切って初手19香成とするのはどうでしょうか。

しかし、これは2手目27飛として

15玉、16歩、同玉、17歩と進めます。

攻方17歩を成香で取れないので、案外延命できません。
以下、15玉、24銀迄で詰みます。

初形に戻ります。

以上のことを踏まえると、初手は18香成が最善の受けです。

これには2手目27飛と指します。

3手目15玉に

16歩、同玉、17歩、

17同成香、26飛、15玉、

16歩、同成香、

25飛、14玉、

15歩、同成香と進めます。

これで初手で動いた受方香を元の位置に戻すことができました。
16手目24飛と両王手をすれば詰上りです。

初形に戻って手順を振り返ります。

18香成、27飛、15玉、16歩、同玉、17歩、
同成香、26飛、15玉、16歩、同成香、25飛、
14玉、15歩、同成香、24飛 迄16手

本作は受先形式の詰将棋
受方香を15の地点に戻して攻方24飛を実行するという明快で美しい構成です。
初手の分岐も重厚で、初手の限定移動が効果的に表現されています。

③ Aleksandr Pankratjew and Evgeny Gavryliv 作

Problem Paradise 2019年

Helpmate in 2, 4 solutions

出題:Issue 88、結果発表:Issue 90
Archives – Problem Paradise

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングをメイトする。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白にチェックする義務はない。

1.Qh8 Qxh8 2.R5d4 Qc8#
1.Qh7 Qxh7 2.Rc5 Qxd3#
1.Qh6 Qxh6 2.R3d4 Qc1#
1.Qh5 Qxh5 2.Rc3 Qxd5#

白の目的は黒キングのメイト。
Directmateなど通常のメイト問題では、黒がメイトされないように抵抗します。
しかし、Helpmateでは黒がメイトされるように白に協力します。
つまり、白も黒も黒キングのメイトが目的です。

白はチェックしない手も指せるのが、詰将棋と異なるのでご注意を。
また、チェスは通常白から指し始めますが、Helpmateでは基本的に黒から指し始めます。
「4 solutions」と書いてあるので、正解手順は4つあります。

初形を再掲します。

メイトしたい黒キングはc4にいて、逃げ道はc3・c5・d4。
閉じ込められているh2の白クイーンを活用しつつ、d3・d5にいる黒ルークを退路封鎖に使えばメイトできそうです。
h2の白クイーンを活用するのに、h3の黒クイーンが邪魔になっています。
白クイーンをhファイルから別のファイルに移動しようとすると、h1の白キングにチェックが掛かってしまいます。

そう考えると、例えば1.Qh5と動かして

1...Qxh5と黒クイーンを白クイーンで取るのが最もシンプルな解決策です。

この後、白クイーンの移動先は2...Qd5が有力です。
しかし、c3の地点が黒キングの逃げ道になっています。
そこで、2.Rc3と退路を封鎖しておきます。

2...Qxd5とすれば黒キングがメイトされます。

初形に戻ります。

正解手順は4つあるので、残り3つです。
黒クイーンの移動先を変えて、1.Qh6とするのはどうでしょうか。

当然白は1...Qxh6とします。

この後、白クイーンの移動先は2...Qc1が有力です。
しかし、d4の地点が黒キングの逃げ道になっています。
そこで、2.R3d4と退路を封鎖しておきます。

2...Qc1とすれば黒キングがメイトされます。

初形に戻ります。

1.Qh7 Qxh7とするのはどうでしょう。

これは2.Rc5と退路封鎖をして、2...Qxd3で黒キングがメイトされます。

初形に戻ります。

1.Qh8 Qxh8とするのはどうでしょう。

これは2.R5d4と退路封鎖をして、2...Qc8で黒キングがメイトされます。

初形に戻って手順を振り返ります。

1.Qh8 Qxh8 2.R5d4 Qc8#
1.Qh7 Qxh7 2.Rc5 Qxd3#
1.Qh6 Qxh6 2.R3d4 Qc1#
1.Qh5 Qxh5 2.Rc3 Qxd5#

本作において、白クイーンの動かし方が横・斜め、黒ルークの動かし方が縦・横なのが見逃せない注目ポイントです。
これらの動かし方は
・黒ルーク:横、白クイーン:横
・黒ルーク:縦、白クイーン:斜め
・黒ルーク:横、白クイーン:斜め
・黒ルーク:縦、白クイーン:横
と計4つの組み合わせがありますが、4つの解で見事に現れています。

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