めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2024年4月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① kazemidori 作

スマホ詰将棋パラダイス No.2216 2013年3月21日
詰将棋 11手

21香成、55角、28香、同玉、22飛成、同角、
27金、18玉、38龍、19玉、28龍 迄11手

攻方28香を動かせば攻方55角で開王手が掛かり、攻方29香を動かせば攻方49龍で開王手が掛かります。
初形では攻方が王手を掛けるには攻方28香を動かすしかありません。

とりあえず初手27香と1マス動かしてみます。

2手目28歩と合駒をするのは、3手目同角と取って詰みます。
2手目55角と根元の攻方角を取ることになります。

3手目は28香と開王手をするしかありません。

4手目29銀と合駒をするのは、5手目同龍と取って詰みます。
4手目は28同玉と攻方香を取りながら逃げることになります。

5手目29龍には6手目37玉と逃げられ、

5手目29銀には6手目17玉と逃げられて詰みません。

初形に戻ります。

初手25香と動かすのはどうでしょうか。

2手目から55角、26香、28玉と進めます。

5手目29龍や29銀で詰まないのは先程と同じです。
攻方香を少し遠くに動かしたことで、5手目27金が可能になります。

6手目18玉に7手目38龍と進めます。

一見詰みそうですが、28の地点に受方55角が利いています。
6手目28歩や19玉などとされて詰みません。

受方55角はいつどこから来たのかと言えば、3手目に二枚目の香で開王手をした際に来たのでした。
構造上、4手目に55角とされるのは不可避です。
受方角を再び退かすしかありません。

初手から25香、55角、26香、28玉と進めた局面に戻ります。

5手目22飛成に6手目同角と進められれば受方角を退かすことができます。
しかし、攻方25香・26香が邪魔で、5手目22飛成が王手になりません。

初形に戻ります。

初手は21香成と最遠移動するのが正解。

攻方が後に22飛成とする際に、邪魔にならない位置へ動かすわけです。

2手目28歩と合駒をするのは3手目同角と取って詰みます。
2手目は55角と根元の攻方角を取ることになります。

3手目は攻方29香を動かして開王手をするしかありません。
しかし、3手目22香成は後に攻方が22飛成と指す際に邪魔になります。

3手目は28香が正解です。

今度は攻方香を近くに動かします。
4手目29銀と合駒をするのは、5手目同龍と取って詰みます。
従って、4手目は28玉と攻方香を取りながら逃げるのが最善です。

二枚目の攻方香が2筋に残らないように受方玉に取らせるのが、3手目28香の目的です。

これで5手目に22飛成を王手として指せます。

6手目37玉は7手目27龍迄で詰みます。

5手目22飛成と指した局面に戻ります。

6手目22同角と攻方龍を取るのが最善です。

これで28の地点に利いていた受方角が退きました。

以下27金、18玉、38龍と進みます。

10手目28歩と合駒をするのは、11手目同龍迄で詰みます。
10手目は19玉が最善で、11手目28龍迄で詰上り。

初形に戻って手順を振り返ります。

21香成、55角、28香、同玉、22飛成、同角、
27金、18玉、38龍、19玉、28龍 迄11手

本作は二枚の攻方香の移動先がポイントです。
攻方が後に22飛成と指す邪魔にならないように、攻方香の移動先が決まります。
着手の目的が同じにもかかわらず、攻方香の移動に遠近の対比が現れるところに明快さと奥深さを感じます。

② 真T作

Web Fairy Paradise 2020年10月
禁欲詰 41手 ※同手数駒余り変化を劣位とする

出題:Web Fairy Paradise 第148号(2020年10月号)
結果発表:Web Fairy Paradise 第150号(2020年12月号)
ビューアで鑑賞:https://k7ro.sakura.ne.jp/jTMLView/TMLView.html?../wfp/wfp126-7.xml

【 禁欲 】
駒を取らない手を優先して着手を選ぶ。

91飛不成、81桂、同飛不成、71桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、71飛不成、61桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、61飛不成、51桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、51飛不成、41桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、41飛不成、31桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、31飛不成、21香、23桂、12玉、
11桂成、同角、23龍、同香、21飛成 迄41手

本作は禁欲という変則ルールが付与された詰将棋です。
禁欲は「指せる手の中から駒を取らない手を優先する」というルールです。
あくまで「優先」するのであって、「駒を取らない手を指さなければならない」わけではありません。
駒を取る手しかない場合は、もちろん駒を取る手を指してよいです。

初形を再掲します。

攻方が受方玉に王手を掛けるには、91飛成か91飛不成しかありません。

とりあえず初手91飛成と指してみます。

受方がこの王手を解除するには、12玉とかわすか合駒を打つかのどちらかです。
2手目12玉とかわすのは、3手目21龍迄で簡単に詰みます。

初手91飛成と指した局面に戻ります。

2手目に合駒をするのはどうでしょうか。
合駒を打てる場所は21~81と7地点あり、何の駒を合駒するかも悩ましいです。

2手目21歩は

3手目同龍と取って詰みます。

禁欲ルールがあるとは言え、攻方が王手を掛けるには21龍と駒を取るしかないため、3手目は問題なく21龍と指せます。

初手91飛成と指した局面に戻ります。

2手目から31歩、同龍、21歩と進めて、攻方龍を近づけてみるのはどうでしょう。

今度は5手目に22龍や12歩といった駒取りではない王手も可能です。
つまり、5手目に21龍と駒を取る手は指せず、22龍か12歩のどちらかを優先して指すことになります。

ここは5手目12歩と指せば詰みます。

以下、12同玉、23龍、11玉、22龍上、同角、21龍迄で詰みます。

初手91飛成と指した局面に戻ります。

先程は2手目31歩と打ちましたが、ここで歩ではなく別の駒を合駒してみます。
攻方が後に12歩と指す手順を防ぐなら、前に利きのない駒が良いでしょう。

例えば、2手目31角と合駒してみます。

3手目31同龍に4手目21歩と進めます。

5手目に攻方が王手を掛けるには、21同龍・22龍・22角の三択です。
ただ、禁欲ルールの影響で5手目21同龍は指せません。
5手目は22龍か22角のどちらかを優先します。

ここは5手目22角と指せば詰みます。

6手目12玉に7手目23龍迄で詰みます。

初手91飛成と指した局面に戻ります。

2手目31歩と31角を検討しました。
2手目31桂と合駒をするのはどうでしょうか。

3手目31同龍に4手目21歩と進めます。

やはり禁欲ルールの影響で、5手目に22龍や23桂といった駒取りではない手がある限り、5手目21同龍と合駒を取る手は指せません。

5手目23桂に6手目12玉と進めます。

7手目は11桂成の一手。

代えて7手目21同龍は駒取りなので、駒取りではない王手がある限り指せません。

8手目は11同玉か11同角のどちらか。
どちらも駒取りですが、王手を解除するには駒を取るしかないので、どちらも問題なく指せます。
8手目11同角は9手目23龍迄で詰みます。

7手目11桂成と指した局面に戻ります。

8手目は11同玉が最善です。

攻方が持駒の桂を消去しただけですが、9手目に23桂とする選択肢が消えているのがポイントです。
今度こそ9手目に21龍と指したくなりますが、9手目22龍と駒取りではない王手が選択として残っています。

10手目は22同歩と22同角のどちらでも、攻方に王手を掛ける手段がなくなって詰みません。

初形に戻ります。

初手91飛”成”は後に攻方が22龍と指す余地が生じて失敗でした。
初手は91飛”不成”とするのが正解です。

攻方としては手の選択肢を自ら狭める方が得というわけです。

2手目から31桂、同飛”不成”、21歩と進めます。

ここから同様に23桂、12玉、11桂成と進めます。

8手目同玉は

9手目に待望の21飛成が指せて詰みます。

7手目11桂成と指した局面に戻ります。

8手目11同角は9手目23龍迄で詰みます。

ここで受方21”歩”が”香”だったら延命できることに気付くでしょうか。

実際、4手目21歩に代えて21香と指して同様の手順で進めれば、この局面に到達可能です。

これなら9手目23龍に対して10手目同香と受けることができます。

11手目21飛成と指して詰みます。

初形に戻ります。

これまでの検討で、
「91飛不成、31桂、同飛不成、21香、23桂、12玉、11桂成、同角、23龍、同香、21飛成 迄11手」
という手順が正解っぽいという結論になりました。

初手は91飛不成と指すしかありません。

2手目31桂よりも延命できる応手があるかが問題です。
例えば、2手目”41”桂と攻方飛により近づけて合駒をするのが、有効な手段になるかどうか。

3手目同飛不成に4手目31桂と進めます。

2手目にいきなり31桂とした場合との違いは、攻方の持駒に桂があることです。
攻方は持駒がない状態なら、5手目に31同飛不成と合駒を取れます。
しかし、持駒に桂がある限り、5手目は23桂と駒取りではない王手を優先して指すことになります。

6手目12玉に7手目11桂成と進めます。

8手目11同角は23龍、同桂、21飛成迄で詰みます。

7手目11桂成と指した局面に戻ります。

8手目は11同玉が最善です。

これで攻方は持駒の桂を消去したことになります。
従って、9手目に31飛不成と合駒を取れます。

以下、21香、23桂、12玉、11桂成、同角、23龍、同香、21飛成迄で詰みます。

初手91飛不成と指した局面に戻ります。

つまり、2手目に31桂と合駒をする前に41桂を入れることで、「攻方は持駒の桂を消去しないと次の合駒を取れない」という状況が発生します。

そう考えると、2手目は81桂が最善です。

3手目同飛不成に4手目71桂と進めます。

5手目から23桂、12玉、11桂成、同玉の4手を入れて、攻方は持駒の桂を消去します。

これで9手目71飛不成と合駒の桂を取れるようになります。

以下は桂合から持駒桂の消去を繰り返していきます。

そうすると、34手目21香と指した局面に至ります。

35手目23桂から12玉、11桂成、同角、23龍、同香、21飛成迄で詰上りです。

初形に戻って手順を振り返ります。

91飛不成、81桂、同飛不成、71桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、71飛不成、61桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、61飛不成、51桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、51飛不成、41桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、41飛不成、31桂、23桂、12玉、
11桂成、同玉、31飛不成、21香、23桂、12玉、
11桂成、同角、23龍、同香、21飛成 迄41手

※ビューアで鑑賞:https://k7ro.sakura.ne.jp/jTMLView/TMLView.html?../wfp/wfp126-7.xml

本作は6回の桂合が見所です。
禁欲という些細な変則ルールが、これほどの手順を生み出しているところが驚きです。
初形が盤面6枚と少ない駒数で作られているのも、意外性を与えるのに大きく貢献しています。

③ Fadil Abdurahmanović 作

feenschach 1975年 4th Commendation

Helpmate in 4

ビューアで鑑賞:https://www.yacpdb.org/#337159

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングをメイトする。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白にチェックする義務はない。

1.Rb6 Bh8 2.Qxh8 Sc7 3.Qa1 Sd5 4.Rb2 Sc3#
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

白の目的は黒キングのメイト。
Directmateなど通常のメイト問題では、黒がメイトされないように抵抗します。
しかし、Helpmateでは黒がメイトされるように白に協力します。
つまり、白も黒も黒キングのメイトが目的です。

白はチェックしない手も指せるのが、詰将棋と異なるのでご注意を。
また、チェスは通常白から指し始めますが、Helpmateでは基本的に黒から指し始めます。

初形を再掲します。

黒キングはb1にいて、この地点でメイトされるのか、それとも別の地点で動かすのかが問題です。
もう一つの問題は、白駒がa1のビショップ・a8のナイト・d1のキングの3枚しかないことです。
黒キングをメイトする駒は、白ナイトか白ビショップのどちらです。

いくつか問題があるにせよ、黒キングをb1に置いたままメイトするのが考えやすく、その場合は必然的に白ナイトでメイトすることになります。
黒マスにいる白ビショップをどう動かしても、黒マスにしか利かないためです。

とりあえず手番を無視して、a8の白ナイトを連続で動かしてみます。
例えば、Sc7~Sd5~Sc3といった経路で動かせば、黒キングはチェックされます。

a8からc3の地点に白ナイトを動かす経路は他にもありますが、とにかく3回動かせばよいので、十分に間に合います。
ただ、これだけでは不十分で、Sc3に対してKa1と逃げられるのでメイトではありません。

初形に戻ります。

b1の黒キングがa1の地点に逃げられないように、白が予めBd4などと動かしておくのは有効そうに見えます。

しかし、a8の白ナイトをc3の地点まで動かしたときに、白ビショップの利きが遮られてしまいます。

b1の黒キングはa1だけでなくb2の地点にも逃げられます。

初形に戻ります。

a1とb2の地点を黒駒で退路封鎖しておく必要があることが分かります。
具体的にはh4の黒クイーンをa1の地点に、g6の黒ルークをb2の地点に動かします。
h4の黒クイーンをa1の地点に動かすには、Qh8~Qa1と指すのが最短経路。

g6の黒ルークをb2の地点に動かすには、Rb6~Rb2と指すのが最短経路。

黒が4回動かせば到達可能なので、ぴったり間に合います。

初形に戻ります。

白は駒を3回、黒は駒を4回動かせば黒キングがメイトされる形を作れることが分かりました。
つまり、白は1回手待ちする余裕があります。

具体的な手順を検討します。
例えば、1.Qh8 Sc7 2.Qxa1 Sd5 3.Rb6と進めてみます。

白としては黒がRb2と指してくれるのを待ってからSc3を指したいです。
この局面で白は手待ちしたいのです。

d5の白ナイトを動かすわけにはいかないので、d1の白キングを動かすしかありません。
白キングはc1とc2の地点に利かす役割があります。
その役割を維持するには、3...Kd2と指すしかありません。

しかし、4.Rb2と指したときに白キングにチェックが掛かるのが問題です。

このチェックを放置して4...Sc3を指すわけにはいかないので、手数超過で失敗です。

初形に戻ります。

「白が1回手待ちする余裕がある」という状況は、意外にも難しいことが分かりました。
白ナイトも白キングも手待ちに使えないとなると、残るは白ビショップによる手待ち。
ただ、Be5などとテキトーに動かしても

h4の黒クイーンをQh8~Qa1の経路で動かす際に邪魔になります。

初形に戻ります。

まずは1.Rb6と黒ルークを先に動かして、黒クイーンの移動を保留するのが正解。

ここで白が1...Bh8と指すのがポイントです。

手順に2.Qxh8と取らせることで、白ビショップが邪魔にならないわけです。

これで白はa8の白ナイトをc3の地点まで動かせばよいです。
ただ、移動経路に要注意。
最終的にc3の地点に動かすなら、2...Sb6と2...Sc7の二択があります。
2...Sb6は黒ルークを取ってしまうのでダメです。
従って、2...Sc7が正解。

次は予定通り3.Qa1。

c7の白ナイトを最終的にc3の地点に運ぶには、3...Sb5と3...Sd5の二択があります。
3...Sb5はb6の黒ルークがb2の地点に動く際に邪魔になります。

従って、3...Sd5が正解です。

4.Rb2 Sc3で黒キングがメイトされます。

初形に戻って手順を振り返ります。

1.Rb6 Bh8 2.Qxh8 Sc7 3.Qa1 Sd5 4.Rb2 Sc3#

※ビューアで鑑賞:https://www.yacpdb.org/#337159

本作は白が手待ちのために白ビショップを捨てるのが意外な展開。
単に捨てるだけでなく、最遠移動する派手さも魅力です。
白ナイトの移動経路が巧みに限定されている点からも、創作技術力の高さが伺えます。

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