めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2023年7月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.超短編双玉詰将棋コンクール 作品募集

担当:駒井めい

2023年6月号で告知した通り、7手以内の双玉詰将棋を対象としたコンクールを開催します。
出題作品を募集しており、応募締切は2023年7月30日です。
詳細は2023年6月号をご覧ください。

meimaga.hatenablog.com

2.Orthodox・Helpmate 解付き 作品募集

担当:駒井めい

チェス・プロブレムのOrthodox・Helpmateを解付きで出題するコーナーです。
出題作品を募集しています。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めい(meikomaivtsume[at]gmail.com)まで送付してください。
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2023年8月31日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

3.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① 塩見倫生 作

近代将棋 1981年12月
詰将棋 3手

44銀不成、25玉、35香 迄3手

王手をかけるには攻方33銀を動かすしかありません。
試しに初手22銀成と開王手をしてみます。

2手目14玉は

3手目24角成迄で詰みます。

初手22銀成迄の局面に戻ります。

この展開は2手目25玉とされたときに困ります。

攻方36香を動かせば開王手がかかりますが、例えば3手目32香成としても

4手目34玉や35玉と逃げられて詰んでいません。

初形では34や35の地点には攻方36香が利いています。
この香を動かさないと開王手ができず、玉の逃げ道が生じてしまうのです。

初形に戻ります。

開王手をしない初手24銀不成はどうでしょう。

これは攻方銀を35の地点に利かす意味があります。
2手目25玉には

3手目35香とすれば詰みます。

35の地点には攻方24銀が利いていて、34の地点には攻方35香が利いています。

初手24銀不成迄の局面に戻ります。

ここで2手目14玉とされると詰みません。

3手目24角成とできれば詰みますが、24の地点には既に攻方銀がいます。

初形に戻ります。

初手で攻方33銀をどこに動かすかは、2手目14玉・25玉の二つを考慮して決めなければなりません。
2手目14玉に対応するためには、24の地点を空けておく必要があります。
そうすれば、24角成で詰ますことができます。
また、2手目25玉に対応するためには、35の地点に攻方駒を利かせておく必要があります。
そうすれば、35香で玉が3筋に脱出するのを防ぐことができます。
この二つの条件を満たすのが初手44銀不成。

攻方は玉を詰ますために玉から離れるように駒を動かすので意外性があります。

2手目14玉には

3手目24角成迄で詰み。

初手44銀不成迄の局面に戻って、

2手目25玉は

3手目35香迄で詰み。

4手目36歩などと合駒をして受けられますが、

5手目36同角で何ともありません。

4手目に36の地点に合駒をするのは、無駄合と扱うことになります。
従って、3手目35香迄の局面で詰め上がりです。

初形に戻って手順をおさらいします。

44銀不成、25玉、35香 迄3手

本作は初手の銀そっぽが主眼。
攻方が駒を玉から遠ざけるように攻めるのは不思議な感触です。
初手は35の地点に利かせた意味もありますが、これを指した時点では攻方香が3筋によく利いているのも見逃せません。
初手を指した瞬間は着手の意味が分かりにくくなっているわけです。

② 縫田光司 作

Web Fairy Paradise 2011年9月
a) 安南協力詰 3手
b) 対面協力詰 3手

出題:Web Fairy Paradise 第39号(2011年9月号)
結果発表:Web Fairy Paradise 第40号(2011年10月号)
ビューアで鑑賞:http://k7ro.sakura.ne.jp/jTMLView/TMLView.html?../wfp/wfp36-1.xml

【 安南 】
味方の駒が縦に並ぶと、上の駒の利きは下の駒の利きになる。
【 対面 】
敵駒と向かい合ったとき、互いに利きが入れ替わる。
( 補足 )
性能変化ルールでは、性能変化により利きが復活しうる位置であれば、一時的に利き所の無い駒の存在も許される。
従って、以下のようになる。
・安南:何も問題なし。
・対面:一段目の桂香歩は禁止。
【 協力詰 】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。
無駄合の概念はなく、合駒は全て有効。

a),b) 46銀打、同桂、47桂 3手

出題図に対して「安南協力詰 3手」「対面協力詰 3手」という異なる条件でそれぞれ解きます。
詰手数はどちらも3手で、協力詰なのも共通点です。

協力詰は普通の詰将棋と比べて受方の対応が異なります。
攻方が受方玉を詰まそうとする手に対して、普通の詰将棋では受方は自玉(受方玉)が詰まないように抵抗します。
一方、協力詰では受方は自玉(受方玉)が詰むように協力します。
つまり、攻方も受方も受方玉を詰ますのが目的というわけです。

さて、「安南」「対面」と解く条件の違いがあります。
これらは盤上の駒の利きが変化するルールで、利きが変化する条件が異なります。
安南は味方の駒が縦に並んだときに利きが変化し、上の駒の利きは下の駒の利きに変わります。
対面は味方の駒と敵の駒が向かい合ったときに利きが変化し、向かい合った駒の利きが入れ替わります。

初形を再度示します。

まずは「a) 安南協力詰 3手」として解いていきます。
安南は味方の駒が縦に並ぶと、上の駒の利きが下の駒の利きになるルールです。
初形で既に利きが変化した駒があります。
受方34桂・35玉が縦に並んでいるので、受方35玉は桂の利きに変わっています。
また、受方44桂・45角が縦に並んでいるので、受方45角は桂の利きに変わっています。

実は受方35玉が桂の利きに変わっているのが厄介です。
初手47桂としても、

2手目同玉とできるので詰んでいません。

初形に戻ります。

受方35玉が桂ではなく本来の利きだったら、玉に逃げ道はありません。
その状態だったら24銀や47桂で詰みます。
受方35玉を桂から本来の利きに戻せばよいので、受方34桂を動かせばよさそうです。

初手は47銀打が正解。

受方は2手目47玉と逃げる手も可能ですが、その展開は3手で詰みません。
協力ルールがあるので、受方は自玉(受方玉)が詰むように協力します。
受方は2手目46同桂と応じるのが正解。

初形の受方34桂が46の地点に移動したことで、受方35玉は本来の利きに戻っています。
3手目47桂とすれば詰め上がりです。

初形に戻ります。

次は「b) 対面協力詰 3手」として解きます。
対面は味方と敵の駒が向かい合ったときに、互いの利きが入れ替わるルールです。
初形では利きが変化した駒はありません。
今度こそ初手47桂で詰みそうに見えます。

受方35玉に逃げ道はありませんし、攻方47桂を取る手段もありません。
しかし、2手目46歩などと46の地点に桂以外の駒を打つ受けがあって詰んでいません。

受方46歩と攻方47桂が向かい合っています。
受方46歩は桂の利きに、攻方47桂は歩の利きに変わっていて、王手が解除されているわけです。

初形に戻ります。

この受けを防ぐために、予め46の地点を受方桂で埋めておくのが解決策。
初手46銀打に

2手目46同桂と進めます。

これで3手目47桂とすれば詰め上がり。

受方46桂と攻方47桂が向かい合っていますが、利きが入れ替わっても結局桂のままです。
46の地点が既に埋まっているので、46の地点に駒を打つ受けもありません。

初形に戻って手順をおさらいします。

a) 安南協力詰 3手 b) 対面協力詰 3手

a),b) 46銀打、同桂、47桂 3手

本作は同じ図に対して安南・対面と異なる変則ルールで解く設定。
変則ルールが異なるにも関わらず、同じ作意手順が成立するのが特徴です。
このように複数の作意手順で表現する場合、「同じ意味付け」で「異なる作意手順」にするのが一般的。
作意手順単体ではなく、作意手順間の差異によって狙いを表現するわけです。
本作では「異なる意味付け」で「同じ作意手順」で表現されています。
意味付けに差異を付けることは、狙いを深く表現できる可能性があります。
しかし、目に見える分かりやすさを欠いているのが難点です。
そういった意味で本作は大変評価に悩む作品ですが、先駆的な作品であることに間違いありません。

③ Fadil Abdurahmanović 作

Problem TT-30 3rd Prize 1960年

Helpmate in 2, 6 set plays

ビューアで鑑賞:https://yacpdb.org/#29740

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングをメイトする。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白にチェックする義務はない。

1...Rd2 2.Se1 Bh6#
1...Rd2 2.Sg1 Bh6#
1...Rd2 2.Sh2 Bh6#
1...Rd2 2.Sh4 Bh6#
1...Rd2 2.Sxe5 Bh6#
1...Rd2 2.Sd4 Bh6#

1.Sd4 Rd2 2.Sb5 Bh6#
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

白は黒キングをメイトするように攻めます。
通常のMate(Orthodox)では黒は自身のキング(黒キング)がメイトされないように抵抗します。
Helpmateでは黒は自身のキング(黒キング)がメイトされるように白に協力します。
白と黒はどちらも黒キングをメイトするのが目的というわけです。

チェスでは通常白が先手ですが、Helpmateでは基本的に黒から指し始めます。
本作は「Helpmate in 2」なので、2手でメイトする手順があります。
つまり、黒→白→黒→白という順番で指して黒キングをメイトします。
詰将棋と違って白にチェックする義務はないことにもご注意を。

改めて初形を示します。

初形で黒キングの逃げ道はd3のみ。
白は1...Rd2~2...Bh6とするのが有力です。 

この局面は3.Sg5と受けられてメイトになっていません。

初形に戻ります。

3.Sg5の受けを消すために、f3の黒ナイトを予め退かしておく必要があります。
例えば黒はSh4の1手が指せれば、e3-h6ラインから黒ナイトの利きを外すことができます。

e3-h6ラインから黒ナイトの利きを外す手はSg1など他にもあります。

とにかく黒キングをメイトするのに、白は2手で黒は1手あれば十分です。
初形において手番は黒ですが、仮に白の手番だとしてメイトする手順を考えてみます。
初形に戻ります。

白の1手目は1...Rd2。

次に2...Bh6を狙った手です。
黒はf3の黒ナイトの利きをe3-h6ラインから外すために、2.Sh2/Sh4/Sg1/Se1/Sxe5/Sd4とします。
要は黒ナイトの移動先は2.Sg5/Sxd2以外ならよいわけです。
代表して下図に2.Sh2と指した局面を示します。

次に白が2...Bh6と指せばメイトします。

初形に戻ります。

初形が白の手番ならメイトすることが分かりました。
しかし、実際には黒の手番です。
黒は1手目でパスみたいな手を指せればよいわけです。
盤上にある黒の駒はe3の黒キング・f3の黒ナイト・h8の黒ビショップの3つ。
このどれかを動かすことになります。

e3の黒キングを動かすのはどうでしょうか。

1.Kd3としたらメイトするのに2.Ke3と戻る必要があります。
黒にf3の黒ナイトを動かす余裕がなくなります。

初形に戻ります。
h8の黒ビショップを動かすのはどうでしょう。

1.Bg7はf8の白ビショップの利きが遮られて、最後に2...Bh6ができません。

1.Bf6とするのは、2...Bh6に対して3.Bg5と受ける余地が生じてダメです。

1.Bxe5は白キングにチェックがかかって、次に白は1...Rd2が指せません。

初形に戻ります。
消去法で考えていくと、f3の黒ナイトを動かすしかなさそうです。

例えば1.Sh4とするのはどうでしょう。

本来は黒が2手目に指したかった手です。
結局、黒は2手目に何を指すかという問題が生じます。
試しに黒ナイトをもう一回動かすとなると、2.Sg2/Sg6/Sf3/Sf5が可能です。
いずれも黒ナイトがe3-h6ラインに利いてしまうので、最後の2...Bh6がメイトになりません。
1.Sg1/Sg5は同様の理由でダメです。

初形に戻ります。

1.Sxh2は白ルークを取ってしまうので論外。

1.Sxe5と白ポーンを取るのは、

次に黒が2.Sc4などともう一回黒ナイトを動かすと、h8の黒ビショップで白キングにチェックがかかります。

こうなると白は最後に2...Bh6と指す余裕がありせん。

1.Sd2は

次に2.Sb1などと黒ナイトを邪魔にならない位置に動かす手を狙っています。
しかし、白は1手目に1...Rd2を指したいので、この黒ナイトを白に取られます。

黒ナイトが盤から消えてしまっては、次に黒が指せる有効な手がありません。

初形に戻ります。

正解は1.Sd4。

白が1...Rd2とした局面で、黒は何を指せばよいでしょうか。

2.Se2/Se6/Sf3/Sf5はe3-h6ラインに黒ナイトが利いてしまうのでダメ。
2.Sc2/Sb3は白キングにチェックがかかってしまうので、

次に白が2...Bh6とする余裕がありません。

2.Sc6はa8の白ビショップの利きを遮ってしまいます。

2...Bh6としても3.Ke4/Kf3と逃げられるのでメイトになりません。

1...Rd2とした局面に戻ります。

2.Sb5が白の攻めを邪魔しない唯一の移動先。

2...Bh6とすれば黒キングがメイトします。

初形に戻って手順をおさらいします。

1...Rd2 2.Se1 Bh6#
1...Rd2 2.Sg1 Bh6#
1...Rd2 2.Sh2 Bh6#
1...Rd2 2.Sh4 Bh6#
1...Rd2 2.Sxe5 Bh6#
1...Rd2 2.Sd4 Bh6#

1.Sd4 Rd2 2.Sb5 Bh6#

本作の課題は如何に黒が1手パスするか。
黒はe3-h6ラインから黒ナイトの利きを外すのに1手で十分。
しかし、黒はもう1手指さなければならないため、その手が白の攻めを邪魔してしまいます。
黒ナイトを2手動かす経路はいくつもありますが、白の攻めを邪魔しない移動経路がたった一つに定まります。
少ない駒数で黒ナイトの移動経路が巧みに制御されています。

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