めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2023年6月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.超短編双玉詰将棋コンクール 作品募集

担当:駒井めい

超短編の双玉詰将棋を対象としたコンクールを開催します。
つきましては、7手以内の双玉詰将棋作品を募集します。
応募いただいた作品は、本誌(めいまが)で出題・解答発表いたします。
詳細は以下の通りです。

1-1 応募資格&作品要件

3つの部門に分けて実施します。

(1) ビギナー部門

応募時点で下記の2つの条件を満たす方のみ応募可能な部門です。
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【 応募資格 】
① 専門誌での入選経験が無い。
スマホ詰パラや専門誌での作品発表が計10回未満である。
※専門誌は詰パラ将棋世界などを指す。
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作品要件は下記の通りです。
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【 作品要件 】
攻方王を用いた7手以内の普通詰将棋
※ツインや複数解は可。
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(2) 普通詰将棋部門

どなたでも応募可能な部門です。
作品要件は下記の通りです。
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【 作品要件 】
攻方王を用いた7手以内の普通詰将棋
※ツインや複数解は可。
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(3) 協力詰部門

どなたでも応募可能な部門です。
作品要件は下記の通りです。
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【 作品要件 】
攻方王を用いた7手以内の協力詰。
※受先、受方持駒制限、ツイン、複数解は可。その他の変則ルール、変則駒などの変則要素の追加は不可。
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1-2 順位付け方法

評点によって各部門の優勝作を決定します。
出題時に解答を募集し、各作品に対して1~5の五段階評価をお願いする予定です。
評点の平均値が最も高かった作品を優勝とします。

公平を期すために、作者名を伏せて出題します。
結果発表時に作者名を公開します。

1-3 応募方法&締切

複数の部門に応募可能ですが、各部門1作を上限としてください。
作品は未発表作に限ります。
作品ごとに下記①~⑤の情報をPDFファイルなどにまとめて、担当の駒井めいまで送付してください。
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① 応募部門
② 作者名(ペンネーム可)
③ 作品図面
※ フェアリールールやツイン設定などの特記事項がある場合は記載。
④ 作意手順
※ 狙いに関係する変化手順や紛れ手順があれば併せて記載。
⑤ 狙いなどの作者コメント(結果発表時に掲載)
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送付先:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM(@MeiKomai_Tsume)でも可。なるべくメールで送付してください。

応募締切:2023年7月30日

1-4 スケジュール

2023年
7月30日:作品応募締切
8月10日:出題&解答募集の開始(2023年8月号)
9月30日:解答締切
10月10日:結果発表の開始(2023年10月号)
※作品数が多い場合は、複数号に分けて結果発表を行います。

2.Orthodox・Helpmate 解付き

担当:駒井めい

作品の投稿がなかったので、今回の出題はお休みします。
次回の出題は2023年9月号を予定しています。
作品を募集しますので、よろしくお願いします。

■ 作品募集
チェス・プロブレム作品を募集します。
但し、OrthodoxとHelpmateに限らせていただきます。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めい(meikomaivtsume[at]gmail.com)まで送付してください。
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2023年8月31日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

3.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① nao 作

詰将棋メーカー 2022年9月13日
詰将棋 15手

出題・解答:無題 | nao | 詰将棋メーカー

21桂成、同玉、31桂成、11玉、21成桂、同玉、
33桂、11玉、23桂、同馬、31飛成、12玉、
11龍、同玉、21馬 迄15手

攻方32飛・43桂がいなければ21馬で詰み。
この二枚の駒は攻方にとって邪魔な駒です。

攻方32飛の消去は簡単。
初手から23桂 同馬と23の地点を封鎖してから、

31飛成 12玉 11龍 同玉とすればよいです。

初形の攻方43桂を消去するにはどうすればよいでしょうか。
攻方43桂を消去するには、まず31桂成とする手が必要になりそうです。
最短ルートを考えるなら、受方玉を21の地点に呼んで31桂成が考えられます。
しかし、21の地点には攻方33桂が利いています。
一旦21桂成と攻方33桂を消去して、どこかで33の地点に桂を再設置できないでしょうか。
試しに上図から21桂成としてみます。

これは単に12玉と上部に逃げられて詰みません。

そもそもの話として、33の地点に攻方桂を再設置しようにも、33の地点には受方馬が利いています。
この展開はどうしようもなさそうです。

初形に戻ります。

攻方32飛を先に消去するのはダメだったので、攻方43桂を先に消去してみます。
初手は21桂成。

2手目は21同玉の一手で、3手目に31桂成を実行します。

4手目11玉に21成桂 同玉と進めれば、初形から攻方43桂が消去できました。

次にやることは攻方32飛の消去と攻方33桂の再設置。
攻方32飛を消去するなら7手目31飛成・22飛成・12飛成が考えられます。
しかし、どれを指しても8手目同玉と飛車を取られた後が続きません。

ここは7手目33桂と桂の再設置を先に行います。

8手目は11玉の一手。

ここまで手が続いているのは、攻方32飛を残すことで受方玉の移動を制限しているからです。

残すは攻方32飛の消去。
9手目31飛成と攻方飛の消去を焦ると、

以下12玉 11龍と進めたときに23玉と上部に逃げられます。

8手目11玉の局面に戻ります。

将来23玉と逃げられるのを防ぐ必要があります。
そこで9手目に23桂と打ちます。

10手目は同馬と応じるしかありません。

これで23の地点が封鎖されました。
11手目に31飛成が実行できます。

以下12玉 11龍 同玉と進めて、初形から攻方32飛・43桂を消去できました。

邪魔な駒が消去されて攻方54馬の利きが通ります。
15手目21馬が実現して詰め上がり。

初形に戻って手順をおさらいします。

21桂成、同玉、31桂成、11玉、21成桂、同玉、
33桂、11玉、23桂、同馬、31飛成、12玉、
11龍、同玉、21馬 迄15手

本作は攻方が二枚の邪魔駒(攻方32飛・43桂)を消去する作品。
邪魔駒を消去するためには、必要な駒(攻方33桂)も消去しなければならないのが意外な展開です。
重い初形がすっきり捌けて気持ち良く、少し捻った構成も良いアクセントになっています。

② 雲海 作

Web Fairy Paradise 2009年12月
背面キルケ協力詰 4手(受先)

出題:Web Fairy Paradise 第18号(2009年12月号)
結果発表:Web Fairy Paradise 第20号(2010年2月号)

【 背面 】
敵駒と背中合わせになったとき、互いに利きが入れ替わる。
( 補足 )
性能変化ルールでは、性能変化により利きが復活しうる位置であれば、一時的に利き所の無い駒の存在も許される。
つまり、背面では行き所のない駒の禁則は適用されない。
【 キルケ 】
駒が取られると最も近い将棋での指し始め位置に戻される。
戻せないときは持駒になる。
( 補足 )
戻り方等は以下の細則に従う。
1) 成駒は生駒になって戻る。
2) 戻り位置が埋まっていたり、二歩になったりする場合は戻れない。
3) 駒取り時、駒が戻るまでを一手と見なす。
4) 金銀桂香(成駒も含む)が5筋で取られ、複数の戻り先候補がある場合、駒を取った側が戻る位置を選択できる。
【 協力詰 】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。
無駄合の概念はなく、合駒は全て有効。
【 受先 】
受方から指し始める。

89香、64角、83玉、82角成 迄4手

背面ルールがあるので、双方の駒が背中合わせになったら利きが入れ替わります。
例えば攻方が83角と指すと、攻方83角と受方84玉が背中合わせになります。

攻方83角の利きは玉に、受方84玉の利きは角になります。
受方は83同玉と攻方角を取れません。
しかし、玉が角の利きになったことで、51玉などと遠くまで逃げられるようになります。

受方玉の背中に大駒である角や馬を持ってくる展開は、到底詰みそうには見えません。

受方玉の背中にそれ以外の駒を持ってくる展開を考えてみます。
攻方が受方から入手するしかありません。
受方から指し始める問題設定なので、例えば初手62桂としてみます。

2手目62同角成と桂を取れば、桂を持駒にできそうですが、

キルケルールのせいで取られた桂は指し始めの位置、つまり81の地点に復活します。

キルケルールがある限り、相手の駒を取って持駒にするのは難しいのです。
詰手数は4手しかないので、攻方は盤上の角と持駒の角を使って詰ますしかなさそうです。

初形に戻ります。

本作は受方から指し始める設定です。
攻方から指し始めて3手の有力そうな手順を探ってみます。
攻方から64角と指すのが有力です。

攻方64角と受方65飛が背中合わせになっています。
背面ルールによって攻方64角は飛車の利きに変わって王手をかけています。
対して83玉とかわせば、飛車の利きになった攻方64角がよく利いていて、玉が上部に脱出するのを防げそうです。

これで攻方が82角成とするとどうでしょう。

このとき攻方82馬と受方83玉は背中合わせになっています。
攻方82馬は玉の利きに、受方83玉は馬の利きに変わっています。
玉は馬の利きになって移動先が多くなって捕まらなそうですが、意外にも逃げ道が少ないことに気付くでしょうか。
例えば61玉と逃げても、飛車の利きに変わった攻方64角が利いていて、王手が解除できていません。

攻方が82角成とした局面に戻ります。

この王手を解除するには、82同玉あるいは同飛と攻方馬を取るしかありません。

このとき、キルケルールによって取られた馬は、指し始めの位置である88の地点に復活します。
成駒は生駒になって復活することもお忘れなく。

この手順では詰むようには見えないかもしれません。
王手を解除するのに攻方馬を取るしかないのがポイント。
本作は受方から指し始める問題設定で、受方の初手で”ある手”を指しておくと、82角成に対して同玉や同飛で王手を解除できなくなります。

初形に戻ります。

受方の初手は89香が正解。

行き所のない駒で禁手のように見えるかもしれません。
しかし、背面ルールの下では行き所のない駒になりません。
受方89香の背中に攻方駒が来て利きが変化すれば、受方香は動ける可能性があります。
背面ルールでは行き所のない駒の禁手は存在しません。

初手89香が合法手であったとしても、これによって何が変わるのでしょうか。
それは先程検討した手順で進めてみると分かります。
2手目から64角 83玉 82角成と進めます。

これで5手目82同玉や同飛と攻方馬を取ってみます。
取られた攻方馬は、キルケルールによって指し始めの位置である88の地点に復活します。

復活した攻方88角は受方89香と背中合わせになっています。
攻方88角は香の利きに変わって、王手がかかっています
5手目に受方が82同玉や同飛と攻方馬を取る手は、自玉を王手に晒す手になるため指せなくなっています。
従って、4手目82角成とした局面で詰め上がり。

初形に戻って手順をおさらいます。

89香、64角、83玉、82角成 迄4手

本作は初手89香が驚愕の一手。
背面ルールがなければ行き所のない駒なので、とても浮かびにくい手です。
この手の意味が作意手順に顕著に表れていないのも、より妙手感を出しています。
キルケと背面という二つのルールが単なる足し算ではなく、掛け算として相乗効果を発揮しています。

③ Mikola IIvanovich Nagnibida 作

Probleemblad 1989年

Helpmate in 2, 2 solutions

ビューアで鑑賞:https://www.yacpdb.org/#370635

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングをメイトする。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白にチェックする義務はない。

1.Bxc3 Rc2 2.Bg7 Rc8#
1.Sxd5 Rd2 2.Se7 Rd8#
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

Helpmateにおいて白の目的は黒キングをメイトすること。
対して黒がどう応じるか。
通常のMate問題(DirectmateまたはOrthodox)ではメイトされないように抵抗します。
しかし、Helpmateでは黒も自身のキング(黒キング)がメイトされるように協力します。
Helpmateでは白も黒も黒キングをメイトすることが目的です。

チェスでは通常白が先手ですが、Helpmateでは基本的に黒から指し始めます。
本作は「Helpmate in 2」なので2手でメイトする手順があることを表しています。
つまり、黒→白→黒→白という順番で指します。
また、「2 solutions」と書いてあるのは、正解手順が2つあるという意味です。
詰将棋と違って白にチェックする義務はないことにもご注意を。

改めて初形を示します。

黒キングをメイトするので、黒キングの逃げ道を確認しておきます。
f8の黒キングは上部、つまりe7・f7・g7の三箇所には逃げられません。
横方向、つまりe8やg8の二箇所には逃げられる状況です。

現状ではh2の白ルークには特に役割がありません。
これを活用する展開を考えてみたくなります。
h2の白ルークをc8あるいはd8の地点に動かせればメイトできます。

h2の白ルークをc8の地点に動かすのに何手かかるか見てみます。
h2→h7→c7→c8という経路が考えられますが、これは3手かかってしまいます。

2手でメイトする問題設定なので、これは手数オーバー。

h2の白ルークを2手でc8の地点に動かすには、h2→c2→c8という経路しかありません。

しかし、この経路はc3の白ビショップが邪魔になっています。
c3の白ビショップはg7の地点に利かせて黒キングが逃げるのを防ぐ役割をしています。
c3の白ビショップをd4などの地点に退かせば、h2→c2→c8の経路が通ります。

しかし、白ルークを動かすのに2手かかります。
c3の白ビショップを退かしている余裕が白にはありません。
黒が何かしらの工夫をするしかなさそうです。

初形に戻ります。

黒の1手目に何を指したらよいでしょうか。
正解は1.Bxc3。

重要な駒であるc3の白ビショップを取ってしまうのは意外な展開。
これは次に2.Bg7としてh2の白ルークの移動経路を作りながら、g7の地点の封鎖を狙った手です。
c3の白ビショップが担っていた役割を黒ビショップにさせようというわけです。

対して白の1手目は予定通り1...Rc2。

次に2...Rc8として黒キングのメイトを狙った手です。

2.Bg7として白ルークの移動経路を作りながらg7の地点を封鎖し、

2...Rc8とすれば黒キングがメイトします。

本作には正解手順がもう一つあります。
初形に戻って考えてみます。

やはりh2の白ルークを活用するのが有力そうです。
h2の白ルークをd8の地点に動かしてメイトする手順を考えてみます。
2手の制約下ではh2→d2→d8という経路しかありません。

しかし、この経路はd5の白ナイトが邪魔になっています。
d5の白ナイトはe7の地点に利かせて黒キングが逃げるのを防ぐ役割を担っています。
一つ目の解と同様に白には手数的な余裕がないので、黒が工夫するしかなさそうです。

黒の1手目は1.Sxd5が正解。

重要な駒であるd5の白ナイトを取ってしまいます。
狙いは一つ目の解と同じ。
次に2.Se7としてh2の白ルークの移動経路を作りながら、e7の地点の封鎖を狙った手です。
d5の白ナイトが担っていた役割を黒ナイトにさせるわけです。

対して白の1手目は予定通り1...Rd2。

次に2...Rd8として黒キングのメイトを狙っています。
これで2.Se7として白ルークの移動経路を作りながらe7の地点を封鎖し、

2...Rd8とすれば黒キングがメイトします。

初形に戻って手順をおさらいします。

1.Bxc3 Rc2 2.Bg7 Rc8#
1.Sxd5 Rd2 2.Se7 Rd8#

本作は黒がメイトに協力しているにも関わらず、黒が白駒を取ってしまうのが意外な展開。
白の戦力をダウンさせているので、一見するとメイトから遠ざかっているように見えます。
白駒が担っていた役割を黒駒にさせる構成になっているので、実際の黒の成果は白駒の消去のみ。
白ルークの移動経路を作るというたった一つ目的が表現されています。

4.掲載記事の募集

詰将棋やチェス・プロブレムに関する記事を執筆してくださる方を募集しています。
内容は論考、作品紹介、入門、詰棋書紹介、宣伝など何でも構いません。
単発・連載どちらでも受け付けます。
字数制限は特にありません。
原稿を編集長の駒井めい(meikomaivtsume[at]gmail.com)まで送付してください。