めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2023年5月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.Orthodox・Helpmate 解付き 作品募集

担当:駒井めい

チェス・プロブレムを解付きで出題するコーナーです。
次回の出題は2023年6月号の予定で、現在作品を募集しています。
但し、OrthodoxとHelpmateに限らせていただきます。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2023年5月31日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

2.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① シナトラ 作
つみき書店HP 2022年8月26日
詰将棋 3手

出題:詰将棋創作チョー入門(24) 第3回三手詰祭 | つみき書店
結果発表:詰将棋創作チョー入門(27) 第3回三手詰祭:結果発表(後編) | つみき書店

62銀、(イ)同銀、21香成 迄3手
(イ) 同金は27香迄。

受方玉に逃げ道はありません。
攻方28香を動かせば攻方19馬の利きが通って開王手がかかります。

これで合利かずの詰みのように見えるかもしれません。
実際に2手目64歩と合駒をして受けてみます。

3手目64同馬とすると攻方65香の利きが遮られます。

4手目62玉と逃げる余地が生じて詰んでいません。

従って、攻方65香の利きが遮られても、受方玉が62の地点に逃げられないようにしておく必要があります。

初手62銀と持駒の銀を捨てるのが解決策。

攻方62銀には攻方65香の紐が付いているので、2手目62同玉とはできません。
2手目は62同銀か62同金のいずれかです。


2手目62同銀の展開から見ていきます。

初形から受方71銀が動いたことで、攻方王に受方11飛で逆王手がかかっています。
攻方王への王手を解除しながら受方玉に王手をかけなければなりません。
3手目は21香成と最遠移動をするのが正解。

初形の攻方28香を動かしたことで、攻方19馬で開王手をかけています。

今度は4手目64歩と合駒をしても

5手目64同馬で詰んでいます。

従って、3手目21香成迄の局面で合利かずの詰め上がりです。

初形に戻ります。

初手62銀に2手目同金の展開を見ていきます。

初形の受方72金が動いたことで、今度は受方18角で攻方王に開王手がかかっています。
やはり攻方王への王手を解除しながら、受方玉に王手をかけなければなりません。
3手目は27香と最も近くに移動するのが正解。

初形の攻方28香を動かしたことで、攻方19馬で開王手をかけています。

4手目64歩と合駒をしても

5手目同馬で詰んでいます。

従って、3手目27香迄の局面で合利かずの詰め上がりです。

初形に戻って手順をおさらいします。

62銀、(イ)同銀、21香成 迄3手
(イ) 同金は27香迄。

本作は変同を利用した対比が見所。
初手で焦点に捨駒をして、いずれにしても攻方王に逆王手がかかるという双玉らしい緊張感があります。
逆王手のかけ方によって香移動の遠近が決まるという対比表現が取られています。
逆王手や限定移動といった個々の手は古典的ですが、対比的に表現して新しい見方を与えたところに面白さがあります。

② soga 作
WFP 2018年3月
詰将棋 10手 ※受先

出題:WFP第117号(2018年3月号)
結果発表:WFP第119号(2018年5月号)
ビューアで鑑賞:http://k7ro.sakura.ne.jp/jTMLView/TMLView.html?../wfp/wfp100-7.xml

【受先】
受方から指し始める。

37銀、同銀、同玉、38歩、36玉、
37銀、47玉、48銀引、36玉、37歩 迄10手

前作と同じく詰将棋ですが、少しだけ変則ルールが加えられています。
一つ目は攻方から指し始めるのではなく、受方から指し始めるということ。
二つ目は受方の持駒は残り全部ではなく、銀のみということ。
受先と受方持駒制限という変則ルールの追加で、一体何が表現されているのでしょうか。

初手は受方の着手ですが、当然受方は自身の玉(受方玉)が詰まないように抵抗します。
攻方手番と仮定して、どのような詰みがあるか見てみましょう。

さて、分かったでしょうか?
実は攻方手番で詰まそうとしても詰まないのです。
例えば37歩と持駒の歩を打つ手が思い浮かびますが、打歩詰なので指せません。

攻方手番で詰まないのに、受方から指し始めたら尚更詰まないように思えるかもしれません。
実際に受方に何かを指させて考えてみましょう。

初手11銀とどうでも良さそうな場所に受方持駒の銀を打ってみます。

受方がパスしたような手ですが、受方持駒の銀を手放したことで詰みが生じています。
2手目23香成と開王手をします。

ここで受方の持駒に銀があれば、3手目26銀と合駒をして詰みません。
受方が持駒の銀を手放したことで、この逃れ筋が消えているのです。
3手目26角の移動合は4手目同飛で詰み。
4手目は25玉とかわすしかありません。

以下15飛、36玉、35飛で6手駒余りの詰み。

初形に戻ります。

もっと延命する方法はあるでしょうか?
受方玉は身動きが取れないので、銀の打ち場所を変えるか、角を移動させるか。
試しに角を動かして、持駒の銀を温存してみます。
例えば初手33角と指してみます。

ただ、26の地点への利きが外れたので、同じく2手目23香成と指せば簡単に詰みます。

3手目26銀は4手目同飛で4手駒余りの詰み。
3手目25玉とかわす手には4手目35とで4手駒余りの詰み。

受方はパスに近い手さえ指せれば詰まないのですが、そのような手が指せないのが本作の重要なポイントです。

初形に戻ります。

銀の打ち場所を考え直してみます。
初手35銀とするのはどうでしょう。

これなら2手目23香成に対して3手目36銀と移動合ができます。

以下同飛、同角と進めて攻方王への逆王手で逃れています。

初手35銀の局面に戻ります。

しかし、ここでは代えて2手目35同とと銀を取って詰んでいます。

以下46玉、45と右、36玉、37銀打で6手駒余りの詰み。

大した延命にはなっていません。

初形に戻ります。

初手37銀とするのはどうでしょうか。

やはり2手目23香成の開王手には、3手目26銀成の移動合があって逃れています。
ここは2手目37同銀と受方銀を取るのが正解。

3手目37同玉と応じるしかありません。

次に4手目48銀打としてしまっては、5手目36玉で初形と同じ局面に戻ってしまいます。

4手目の正解は38歩。

5手目の候補は36玉と47玉。
5手目は36玉が最善で、47玉は早く詰みます。
5手目47玉の変化を見てみます。

以下48銀打、36玉と進めると、なんと初形の盤面に攻方38歩を追加して手番を入れ替えた局面が現れます。

これなら8手目37歩が打歩ではなく突歩なので詰みます。

4手目38歩の局面に戻ります。

5手目46玉の変化は今見たので、今度は作意の5手目36玉を見てみます。

以下37銀、47玉、48銀引、36玉と進めれば、先程と同じく初形の盤面に攻方38歩を追加して手番を入れ替えた局面が現れます。

これで10手目37歩と歩を突けば詰め上がり。

初形に戻って手順をおさらいします。

37銀、同銀、同玉、38歩、36玉、
37銀、47玉、48銀引、36玉、37歩 迄10手

本文で触れなかった変化を示しておきます。
・初手14銀は23香成、25玉、35と迄。
・初手24銀は同香、25玉、35と、14玉、15飛迄。
・初手25銀は同香、同玉、15桂、14玉、23桂成、15香、24圭迄。
・初手34銀は23香成、25玉、15飛、36玉、47角迄。
・初手24角は同香、25玉、35と迄。
・初手26角は同飛迄。

本作は攻方から指し始めても打歩詰を打開できないのに、受方から指し始めて受方が詰まないように抵抗すると、何故か打歩詰が打開できてしまうというパラドキシカルな構成になっています。
僅かな変則ルールの追加が非常に不思議な手順を生み出しており、独創的で興味深い作品です。

③ Viktoras Paliulionis 作
Lettonie-Lituanie-Leningrad 1986年 1st-2nd Place

Helpmate in 2, b) Remove wSb4

ビューアで鑑賞:https://www.yacpdb.org/#304202

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングを詰ます。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白に王手義務はない。

a) 1.Qc5+ Sd5 2.Qa3 Sb6#
b) 1.Qe3+ Be4 2.Qa3 Bc6#
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

黒キングをメイトするのが目的。
通常のMate問題(いわゆるOrthodoxあるいはDirectmate)では、白の攻めに対して黒がメイトされないように抵抗します。
しかし、Helpmateという問題形式では、黒は自身のキング(黒キング)がメイトされるように協力します。
とにかく指定された手数(本作の場合は2手)で黒キングをメイトする手順を求めればよいわけです。
詰将棋と違って白にチェックする義務はないので、チェックにならない手も可能です。

初形を見てみると、黒キングは意外に動ける場所が限られていることが分かります。
a4にいる黒キングが移動可能な場所はa3とa5。

b4の白ナイトをどこかに動かせば、e1の白ビショップの利きが通って、a5の地点にも利くようになります。
これで黒キングの逃げ道はa3の地点のみになります。

a3の地点への逃げ道は、c1の黒クイーンで埋めて封鎖すればよさそうです。

白黒1回ずつ動かせば、黒キングの逃げ道をなくすことができると分かりました。

初形に戻ります。

では、何の駒でメイトしたらよいでしょうか。
c4の白ナイトをどこかに移動させた後は特に使い道がないので、この白ナイトを活用してみたいところです。
黒クイーンをa3の地点に動かすので、メイトするにはa3の黒クイーンに取られない所に白ナイトを動かす必要があります。

b6の地点を目指して1...Sd5~2...Sb6とするしかなさそうです。

1...Sa6~2...Sc5としても黒キングにチェックはかかりますが、

3.Qc5と黒クイーンで白ナイトを取ることができてメイトになっていません。

初形に戻ります。

これで大体の手順が見えてきました。
黒から指し始めるので、「1.Qa3 Sd5 2.?? Sb6」あるいは「1.?? Sd5 2.Qa3 Sb6」となるでしょう。
黒はQa3の1手だけ指せれば十分なので、黒は1手余分に指さなければなりません。
黒の駒はキングとクイーンの2枚。
黒が動かすとしたら、このどちらかしかありません。

1.Qa3 Sd5 2.?? Sb6の手順を考えてみましょう。
初形から1.Qa3 Sd5と進めた局面を見てみます。

白の駒が利いていてa4の黒キングを動かすことはできません。
a3の黒クイーンを動かすしかありません。
ただ、a3の黒クイーンは黒キングの逃げ道を封鎖する役割です。
黒クイーンをa3の地点から動かしてしまうと、2...Sb6がメイトになりません。
1.Qa3 Sd5 2.?? Sb6の手順では上手くいきそうにありません。

初形に戻って1.?? Sd5 2.Qa3 Sb6の手順を考えてみましょう。

黒の1手目に何を指すかを早速考えなければなりません。
黒キングを動かすのはどうでしょう。
候補は1.Ka3/Ka5?の二つ。

例えば、1.Qa3? Sd5と動かしてみます。

a4の地点から離れてしまった黒キングを元の位置に戻さなければメイトできません。
しかし、それではQa3を指す余裕がありません。
1.Ka5?としても同じ理由でメイトできません。

初形に戻って1.?? Sd5 2.Qa3 Sb6の手順を考え直してみます。

黒の1手目に何を指すかを考えていたのでした。
黒キングを動かすのは上手くいかないことが分かりました。
残る可能性は黒クイーンを動かす手。
後に黒が2.Qa3と指すことを考えると、黒の1手目における黒クイーンの移動先は、次にa3の地点に移動できる位置でなければなりません。
例えば、1.Qb2+/Qc3+?が考えられますが、いずれも白キングへのチェックになっています。


このチェックを解除しなければならないので、白は1...Sd5と指すことができません。
白キングへのチェックがかからない手を指そうと思っても、どの手も次に黒が2.Qa3と指せません。

初形に戻ります。

黒の1手目の正解は1.Qc5+。

b4の白ナイトが邪魔で次に黒は2.Qa3と指せないように見えます。
試しに1...Sd5と指してみれば分かります。

黒クイーンから白キングへのチェックを受けながら、c5からa3へ移動する道ができました。
2.Qa3と指します。

これで2...Sb6#と指せばメイト。

続いてb図を解いていきます。
「b) Remove wSb4」と書いてあるのは、出題図からb4の白ナイトを取り除くという意味です。

この図で同様に「Helpmate in 2」を解きます。

b4の白ナイトがいなくなって、e1の白ビショップの利きが最初からa5の地点まで届いています。
白キングを除く3枚の白駒がよく利いていて、黒キングの逃げ道はa3の地点しかありません。
先程の図(a図)では白ナイトでメイトしましたが、b図ではその白ナイトがいません。
何の駒でメイトすればよいでしょうか。

e1の白ビショップはどうでしょうか。

黒マスにいる白ビショップは黒マスにしか移動できず、白マスにいる黒キングにチェックをかけられません。

a2の白ポーンはどうでしょうか。

白ポーンをa3の地点に動かしても、黒キングにチェックはかかりません。

初形でa2にいるポーンでa4の黒キングにチェックをかけるには、黒クイーンをb3の地点に捨てる必要があります。
例えば、1.Qa3~2.Qb3といった手順が考えられます。

これで2...axb3と黒クイーンを取れば白ポーンでチェックがかかります。

ただ、この図では3.Ka3/Kxb3と逃げられるのでメイトになっていません。

未確定の白の1手目でa3とb3の二地点に利きを作れば解決しますが、それは不可能そうです。

b図の初形に戻ります。

残された候補はd4の白ビショップ。
Bb5とすれば黒キングにチェックがかかりますが、

Kxb5と白ビショップを取って逃げられます。

b図の初形に戻ります。

d3の白ビショップはb5の地点に利かせて、黒キングの逃げ道を封鎖する役割を担っています。

黒キングがb5の地点に逃げられないようにしながら、d3の白ビショップで黒キングにチェックをかけるにはどうしたらよいでしょうか。
これは1...Be4~2.Bc6のように白のビショップを展開すれば解決します。

あとはa3の地点を黒クイーンで封鎖する手順を考えればよさそうです。
初形に戻ります。

a図でも述べたように、c1の黒クイーンを直接a3の地点に動かすのは、黒があと1手何を指したらよいか困ります。

やはりa図と同様に黒クイーンを寄り道をしてa3の地点に動かさなければなりません。
例えば、1.Qc3~2.Qa3のような手順が考えられますが、

1.Qc3が白キングへのチェックになってしまい、白の1手目でd4の白ビショップを動かすことができません。
どういう経路を辿っても、白キングへのチェックは避けられません。

初形に戻ります。

黒の1手目の正解は1.Qe3+。

白キングにチェックがかかっています。
しかも、d3の白ビショップが邪魔で、次に黒クイーンをa3の動かせなさそうです。

1...Be4と指してみれば分かります。

手順に白キングへのチェックを防ぎながら、黒クイーンがe3からa3へ移動する道が開けています。
これで2.Qa3 Bc6#と指せばメイトです。

b図の初形に戻って手順をおさらいします。

1.Qe3+ Be4 2.Qa3 Bc6#

a図の手順もおさらいします。

1.Qc5+ Sd5 2.Qa3 Sb6#

本作は黒が余分な1手を指そうと黒クイーンを寄り道して動かすと、白キングにチェックをかけてしまうのが面白いところ。
Helpmateなので黒は自身のキング(黒キング)がメイトされるように白に協力しているにも関わらず、一見白に抵抗しているような強い手が現れるのは驚きがあります。
黒クイーンの寄り道の経路はa図とb図で異なっているのも気が利いています。
二つの図の手順は同じ意味付けで異なる手順になっていて、美しい対比が実現されています。

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