めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2023年2月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.Orthodox・Helpmate 解付き 出題

担当:駒井めい

川越敏司氏によるOrthodox2作、Antilles氏によるHelpmate1作を出題します。
解答は同号の最後で発表します。
短評を募集しますので、よろしくお願いします。
作品の解説と短評掲載は次号(2023年3月号)で行います。

■ 短評募集
作品に対する短評を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
締切:2023年3月5日

■ 作品募集
次回の出題は2023年4月号を予定しています。
チェス・プロブレム作品を募集します。
但し、OrthodoxとHelpmateに限らせていただきます。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2023年3月31日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

① 川越敏司 作

#2

【 Mate in n (#n) 】
白から指し始め、黒がどのように応じてもn手以内で黒のキングを詰ます。
詰将棋と異なり、白に王手義務はない。

② 川越敏司 作

#3 vv

③ Antilles 作

H#2 2 solutions

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングを詰ます。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白に王手義務はない。

2.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① ほっと 作
第ϻ回裏短コン 2017年11月
詰将棋 5手 「刺し穿つ死棘の槍」

出題:詰将棋考察ノート 第ϻ回裏短編コンクール出題
結果発表:詰将棋考察ノート 第ϻ回裏短コン「刺し穿つ死棘の槍」

(A)12龍、(イ)22金、23角、同角、43香成 迄5手

(A)
・27王は37飛、同香、同桂成で逃れ。
・28王は37銀、同香、同桂成で逃れ。
・49王は37桂打、同香、同桂不成で逃れ

(イ)
・22飛は27王、37歩、43香成迄。
・22銀は28王、37歩、43香成迄。
・22桂は49王、37歩、43香成。

初手43香成とできれば受方玉が詰みます。
しかし、43香成とすると受方56角の利きが攻方38王に当たってしまうので、これはできません。

初手27王/28王/49王とすれば、開王手をしつつ攻方王を受方角のラインから逃がすことができます。

対して2手目37歩合のような受けは3手目43香成迄。

43香成とさせないために、2手目に逆王手をするのが最善の受けです。
つまり、(1) 初手27王なら2手目37飛、

(2) 初手28王なら2手目37銀、

(3) 初手49王なら2手目37桂打

といったように、初手に攻方王をどこに動かすかによって、受方が37の地点に何の駒を合駒するかが変わります。
この後、3手目37同香と合駒を取っても、4手目同桂成あるいは同桂不成と再び逆王手をかけられて、攻方が王手を継続する手段がなくなります。

話を初形に戻します。

代えて初手12龍とするのが解決策です。

受方に合駒で駒を使わせることを狙った手です。
要は「後出しじゃんけん」をやろうというわけです。
(1) 2手目22飛なら受方の持駒から飛がなくなります。
3手目27王とすれば4手目に受方は逆王手をかけられません。

以下、4手目37歩に5手目43香成迄。

(2) 2手目22銀なら3手目28王を指せば逆王手がかかりません。

(3) 2手目22桂なら3手目49王を指せば解決。

受方が持駒の飛銀桂を温存するために2手目22歩としたいところですが、二歩になってしまうのでできません。
従って、2手目22金の移動合が最善の受け。

3手目27王/28王/49王の開王手は、受方が持駒に飛銀桂を温存した効果でやはり4手目37飛/37銀/37桂打の逆王手をくらってしまいます。
攻方王を動かす目的は、攻方王を受方56角のラインから逃がすことでした。
3手目23角に4手目同角と進めれば、角の利きを逸らすことができます。

これで待望の5手目43香成が実行できて詰め上がり。

本作のメインは「後出しじゃんけん」のような攻方が態度を保留する構成。
初手で攻方王を動かして開王手をすると、攻方王の移動先に応じて飛銀桂の逆王手をくらってしまいます。
これを防ぐために攻方は飛銀桂を合駒として使わせ、このときの合駒の種類によって開王手をするときの攻方王の移動先が限定されます。
更に面白いのが、この構成が作意に顕著に現れないということです。
これらのやり取りの結果が、2手目22金の移動合に集約されています。
作意を鑑賞しただけでは本作の狙いは分からず、読み解いていった先に奥深い世界が用意されている高尚な作品です。

② 真T 作
WFP 2021年4月
All-in-Shogi協力詰 7手

出題:WFP第154号(2021年4月号)
結果発表:WFP第156号(2021年6月号)
ビューアで鑑賞:http://k7ro.sakura.ne.jp/jTMLView/TMLView.html?../wfp/wfp131-8.xml

【 All-in-Shogi 】
双方とも自分の駒だけでなく相手の駒を動かすこともできる。
ただし、双方とも1手前の局面に戻す着手は禁手とする。
[ 補足 ]
1) 相手玉を動かす王手や、相手の持駒を打つ手も可。
2) 相手に相手の駒を取らせることはできない。
3) 相手の駒に自分の駒を取らせたとき、その駒は相手の持駒となる。
4) 自玉を取らせる手は反則。

【 協力詰 】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。

29v玉、18玉、29金、39v金、29v玉、19玉、29金 迄7手

初手29金迄で詰み。

…かと思いきや、実は詰んでいません。
All-in-Shogiルールでは自分だけでなく相手の駒も動かすことができます。
2手目で受方が攻方金を39の地点に動かすことができます。

この手を符号で書くと「2手目39v金」で、「v」は相手が動かしたことを表しています。

「それならどうやって詰ますの?」と思った方もいるでしょう。
ここで「双方とも1手前の局面に戻す着手は禁手とする」というルールが重要になります。
盤上の攻方39金を29金と移動させることができれば、受方が39v金と王手を解除する手がなくなります。
持駒金を39の地点に設置する手順を探せばよいわけです。

単純に初手から29金 39v金と進めてみます。

3手目29金で詰み。
…かと思いきや、これは禁手です。
2手目39v金迄の局面で3手目29金と着手しようとすると、1手前である初手29金迄の局面と同じになってしまいます。
単純な方法では上手くいかず、もう少し工夫する必要がありそうです。

次に思い付く解決策が、初形から受方19玉を29の地点に移動させた局面を作ること。

ここから39金 19玉 29金迄で詰みそうです。
しかし、受方玉が29の地点にいる局面で攻方手番を迎えるためには、その前の受方着手で攻方角の王手を放置しなければなりません。
この局面に持ち込むことは不可能なのです。

詰手数が7手であることを考えると、29金 39v金の2手によって攻方金を盤上に設置することになりそうです。
29金 39v金の後に別の局面を挟めば、最終手29金と実行できます。
そこで初手から29金 39v金 29v玉と進めてみます。

ここで手番は受方。
4手目19玉と戻せればよいですが、1手前の局面に戻すことになるのでできません。
仕方なく4手目18玉と逃がしても、やはり受方玉を19の地点に戻すのは簡単ではありません。

初手から29v玉 18玉として、金を打たずに玉の位置を変えるのが正解。

受方玉が18の地点にいる状態で、3手目29金に4手目39v金の2手を入れます。

5手目29v玉に6手目19玉と進めて、目的の局面に持っていくことに成功しました。

今度こそ最終手29金が実行できて詰め上がりです。

8手目39v金は1手前の局面に戻すことになるので、受方はこの王手解除ができません。

「駒を地点Xに打たず、一旦控えて打ってから地点Xに動かす」という手順は、まさに先打突歩詰のようです。
詰将棋入門(129) 先打突歩詰 | つみき書店
6手かけて攻方39金を設置する労力に加えて、先打突歩詰との類似性が面白いです。

Uri Avner 作
Probleemblad 1957年

Helpmate in 2, 2 solutions

ビューアで鑑賞:https://yacpdb.org/#444780

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングを詰ます。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白に王手義務はない。

1.Rf4 Rc6 2.Ke5 Sd6# (2...Sg3+?)
1.Bc6 Bf4 2.Ke6 Sg3# (2...Sd6+?)
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

初形を見るとe1の白ルーク・e4の白ナイトがDiscovered attackできる形です。

f5の黒キングをe5あるいはe6の地点に動かせば、e4の白ナイトを動かしてDiscovered checkがかかります。
しかし、e5の地点にはh2の白ビショップ、e6の地点にはa6の白ルークが利いているために移動できません。

そこで、黒キングをe5の地点に移動させるために、1.Rf4としてh2の白ビショップの利きを遮ります。

これで黒は次に2.Ke5と指すことができ、2...Sd6+とf5の地点に利かせながらDiscovered checkをかけることができます。

こうなると黒には受けがなさそうですが、b7の黒ビショップが利いているので3.Be4!と受けられてメイトになっていません。

1.Rf4とした局面に話を戻します。

ここで白が1...Rc6とするのが解決手段。
b7の黒ビショップを利きを予め遮っておきます。

2.Ke5 Sd6#と進めればメイト。

このとき、f4の黒ルークはPinされているので、3.Re4?と受けることはできません。

2...Sd6#に代えて2...Sg3+?も、f5の地点に利かしながらe1の白ルークの利きを通す手で、意味は同じように思えます。
これはh2の白ビショップの利きを遮ってしまうのが問題です。

f4の黒ルークのPinが外れてしまい、3.Re4!と受けられてしまいます。

初形に戻って2つ目の解を見ていきます。

今度はf5の黒キングをe6の地点に移動させることを考えます。
現状はa6の白ルークが利いているので、これをなんとかする必要があります。

そこで1.Bc6とするのが解決策。
a6の白ルークの利きを遮ります。

次に黒が2.Ke6として、対して白が2...Sg3+としてf5の地点に利かしながらe1の白ルークの利きを通せば、メイトが見えてきます。

しかし、h4の黒ルークが利いているので、3.Re4!と受ける余地が残っています。

1.Bc6とした局面に話を戻します。

白が1...Bf4として、h4の黒ルークの利きを予め遮っておけばよいわけです。

これで2.Ke6 Sg3#と進めてメイト。

このとき、c6の黒ビショップはPinされていて動けません。
2...Sg3#に代えて2...Sd6+?はf5の地点に利かす意味では同じですが、c6の黒ビショップのPinが外れてしまい、3...Be4!と受ける手が生じます。

本作はh2の白ビショップとh4の黒ルークが互いに利きを遮り合います。
更に、a6の白ルークとb7の黒ビショップも互いに利きを遮り合います。
2解として完璧な対照性と言えます。
また、白の2手目はe1の白ルークの利きを通しながらf5の地点に利かす着手で、これを満たすのはSd6とSg3の2つがありますが、Pinを解除しないようにどちらかに限定されるのも面白いところ。
細部まで拘り抜かれた緻密な作品です。

3.Orthodox・Helpmate 解付き 解答

担当:駒井めい

① 川越敏司 作

#2

【 Mate in n (#n) 】
白から指し始め、黒がどのように応じてもn手以内で黒のキングを詰ます。
詰将棋と異なり、白に王手義務はない。

〔 解答 〕
1.Qc3! (threat: 2.Sxc5/Qb4/Qa5#)
 1...b2 2.Sxc5#
 1...Sb7 2.Qb4#
 1...Sxa6/Sd3 2.Qa5#
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

② 川越敏司 作

#3 vv

〔 解答 〕
1.Kg3/Kg4? (threat: 2.Sf6+ Kxh8 3.Sf5#)
 but 1...Kxh8!

1.Sg4? (threat: 2.Sgf6+ Kxh8 3.Kg3/Kg4#)
 but 1...Kg8!

1.Ba1!
 1...d6 2.Rb2 Kh8 3.Rb7#

③ Antilles 作

H#2 2 solutions

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングを詰ます。
もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白に王手義務はない。

〔 解答 〕
1.Bb4 Sxc4 2.Kxc4 Rxb4#
1.Bc5 Sxe3 2.Kxe3 Bxc5#

4.掲載記事の募集

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