めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2022年12月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.Orthodox・Helpmate 解付き 出題

担当:駒井めい

川越敏司氏によるOrthodox4作を出題します。
解答は同号の最後で発表します。
短評を募集しますので、よろしくお願いします。
作品の解説と短評掲載は次号(2023年1月号)で行います。

■ 短評募集
作品に対する短評を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
締切:2023年1月5日

■ 作品募集
次回の出題は2023年2月号を予定しています。
チェス・プロブレム作品を募集します。
但し、OrthodoxとHelpmateに限らせていただきます。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2023年1月30日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

① 川越敏司 作

#2

【 Mate in n (#n) 】
白から指し始め、黒がどのように応じてもn手以内で黒のキングを詰ます。
詰将棋と異なり、白に王手義務はない。

② 川越敏司 作

#2

③ 川越敏司 作

#2*

④ 川越敏司 作

#3 v

2.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① 金少桂 作
詰将棋メーカー 2022年9月21日
大道棋 5手

出題:【大道棋】堺角香問題をシンプルにしてみた | 金少桂 | 詰将棋メーカー

(A)82香、(イ)92玉、74角、93玉、83角成 迄5手。

(イ)
2手目71玉は53角(44角~17角も可)、61玉、62角成(62とも可)迄。

(A)
初手84香は83銀合、63角、71玉以下逃れ。
初手63角は92玉、74角成、81玉、84香、71玉、82香成、61玉以下逃れ。

大道棋は元々道端や縁日などで出題される詰将棋のことを意味していました。
中でも「簡単に詰むように見えて意外な受けがあってなかなか詰まない」ような問題が特徴的です。
現在では本来の意味での大道棋は行われていませんが、「簡単に詰むように見えて意外な受けがあってなかなか詰まない」ことを特徴とする詰将棋を大道棋と呼び、大道棋の文化は継承され続けています。
大道棋のルールは普通の詰将棋とほとんど同じですが、駒余り詰を許容しているなど若干の違いがあります。
本作は大道棋ですが、詰将棋としても完全作なので特に気にする必要はありません。

普通の詰将棋を評価する際は作意手順が重要な要素となりますが、大道棋では作意手順よりも紛れ手順や初形の方が重要と言えるでしょう。
大道棋は解いてみるのが一番面白いですが、今回は一緒に紛れ手順に引っ掛かって鑑賞しながら、大道棋の面白さの一端に触れていきましょう。

出題図を再掲します。

初形は盤面4枚に持駒2枚とシンプル。
如何に簡単な詰みそうな雰囲気を醸し出しています。

初手で攻方73とを捨ててしまっては手掛かりがなくなってしまいます。
持駒の角か香のどちらかを打つことになるでしょう。
まずは角打ちから考えてみます。

初手72角と近くから打つのはどうでしょうか。

2手目92玉なら3手目83と迄。
しかし、2手目71玉とされて詰みません。

初手63角と角を離して打ってみます。

2手目71玉には3手目72角成で詰ますことができます。
しかし、2手目92玉とされてたときの詰ます手段がありません。

以下3手目74角成としても4手目81玉と戻られます。

5手目63馬と続けてもなら千日手模様。
5手目82香~84香なら6手目71玉で逃れています。

初手で角を打ってしまうと上手くいかないことが分かりました。
角打は保留して、初手で香を打つ手を考えてみます。
例えば、初手86香は2手目85歩合などと受方76角の利きを利用して受けられます。

従って、香の打ち場所の候補は82~84となります。

初手84香と離してみたいところです。

2手目92玉には83香成、81玉、82成香迄。
気になるのは2手目71玉。

3手目82香成と追ってしまうと4手目61玉と広い方に逃げられて詰みません。

3手目は香を成らずに53角と温存していた角を打てば解決します。

4手目61玉に5手目62角成迄です。

これで解けたような気になりますが、まだ考えていない受けがあります。
2手目83歩合と中合をするのはどうでしょうか。

対して3手目83同香不成と合駒を取ってしまうと、4手目71玉なら5手目53角から詰みますが、4手目92玉とされて詰みません。

中合をした効果で、受方が92玉と逃げたときに攻方が83香成とできなくなっています。

しかし、2手目83歩合には3手目63角と打てば解決します。

4手目92玉には5手目83香成迄、4手目71玉には5手目72角成迄です。
ここで4手目71玉に5手目72角成となった局面をよく見てみてください。

もし72の地点に利きがあったら、この手順は詰まないことが分かるでしょうか。
つまり、2手目83銀合と歩ではなく銀を中合するのです。

3手目63角に4手目71玉と同様に進めてみます。

今度は72の地点に利きができているために72角成が詰みません。
初手84香はパッと見では有力そうですが、2手目83銀合という絶妙な受けで詰まないわけです。

残す初手の候補は83香と82香。
2手目83香は3手目92玉とされて詰みません。

最後は初手82香と近付けて打つ手です。

2手目71玉は53角、61玉、62角成迄。
2手目92玉はどうでしょうか。

初手84香のときは83香成から詰ますことができました。
初手82香としてしまうと、香の打ち場所が近すぎて83香成とする手が消えてしまっています。

ただ、よく見てもらいたいのは83の地点が空いていることです。
3手目74角と王手をする手が可能になっています。

4手目93玉に5手目83角成迄で詰め上がり。

本作は持駒の角香をいつどこに打つかが重要です。
初手で角を打つのは近付けても離しても惜しくも詰みません。
持駒の角を温存して初手で香を打つことになりますが、離して打つと今度は銀中合という第3の逃れ筋が現れます。
香を近付けて受ける銀中合を見た後に、初手82香と最も近くから打つ手は一見詰みそうに見えないので、候補手から外したくなります。
83の地点を空けておいて2手目92玉に角打で王手できるようにした意味があります。

初手82香から手を読んだ人は簡単だったかもしれません。
詰将棋らしく香を離して打つ手から読んだ人は苦戦したことでしょう。
5手詰と短い手数ながら大道棋のエッセンスが詰まった作品です。

② 縫田光司 作
第1回アンチキルケばか詰作品展 2005年10月
アンチキルケばか詰 5手

結果発表:第1回アンチキルケばか詰作品展

【 ばか詰(協力詰)】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。無駄合の概念はなく、合駒は全て有効。
【 アンチキルケ 】
駒取りがあったとき取った方の駒が、最も近い将棋での指し始め位置に戻される。
(補足)
戻り方等は以下の細則に従う。
1) 成駒は成ったまま戻る。
2) 戻り位置に駒があり、戻れない場合は戻らない。
3) 駒取り時、駒が戻るまでを一手と見なす。
4) 金銀桂香(成駒も含む)が5筋で駒取りを行い、複数の戻り先候補がある場合、戻る位置を選択できる。片方にのみ戻れる場合は強制的にそちらに戻る。

23桂、同成桂/21成桂、23桂、同角不成/22角、23桂 迄5手。

初手は23桂しか王手をかける手段がありません。

問題は2手目で受方がどう応じるか。
2手目21玉と逃げると、残り3手では詰みません。
普通詰将棋なら受方は詰まないように抵抗しますが、本作はばか詰(協力詰)なので受方は詰まされるように協力します。
そうは言っても、2手目はどう応じればよいのでしょうか。
2手目同成桂と攻方23桂と取るのが正解です。

ここでアンチキルケのルールをよく確認する必要があります。
駒取りがあったときに取った方の駒が、最も近い将棋での指し始め位置に戻されます。
受方成桂は攻方23桂を取ったので、受方成桂は21の地点に移動します。
桂馬の指し始め位置は21と81の地点で、近いのは21の地点だからです。
このとき、成桂は成ったまま移動します。

2手目は23同成桂と駒取りをして21の地点に移動するまでで一手です。
2手目の棋譜表記は「同成桂/21成桂」と書き表します。

続いて3手目。
王手をかけるにはやはり23桂しかありません。

対して4手目22玉と逃げるのは5手以内で詰みません。
4手目同角と応じることになりますが、ここで成るか成らないかの選択肢があります。
ここは同角”不成”が正解で、その理由は5手目で明らかになります。

4手目は同角と駒を取ったので、受方角は将棋での指し始め位置である22の地点に移動します。
ここまで指して4手目の着手が完了です(4手目同角不成/22角)。

いよいよ最終手です。
王手をかけるにはやはり23桂しかなく、これで詰め上がりです。

4手目が不成でなければならない理由は分かったでしょうか。
代えて4手目同角”成”/22馬として5手目23桂としてみます。

これには6手目同馬/22馬と攻方23桂を取って王手を解除できてしまいます。

これを防ぐための不成だったのです。

本作は23の地点に持駒の桂を三連打する楽しい作品。
普通の詰将棋では同じ地点に連打することができません。
アンチキルケルールを存分に活かした手順と言えるでしょう。
最小限の労力で最大限の表現をした印象で、作者の高いセンスが垣間見えます。

Marco Bonavoglia 作
Problemkiste 2004年

Proof game in 4.0 Circe

【 Proof game(PG)】
実戦初形から始めて、指定された手数で問題図に至るような手順を求める。
【 Circe 】
取られた駒(キングを除く)はチェスでの指し始め位置に再生する。
(補足)
・ルーク、ビショップ、ナイトは指し始め位置が二箇所あるが、再生位置は取られたマスと同じ色を選ぶ。
・ポーンの指し始め位置は八箇所あるが、再生位置は取られたマスと同じファイルを選ぶ。
・再生位置が他の駒に占有されている場合、取られた駒は通常の駒取りと同じく盤上から消える。
・再生したルークによるキャスリングは可能。

1.e4 Sf6 2.Qh5 Sxe4(+wPe2) 3.Qxh7 Sf6 4.Qg8 Sxg8(+wQd1)
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

実戦初形からh7の黒ポーン(bPh7)が消去された図。
実戦初形から4.0手でこの図に至る手順を求める問題設定です。
白が自身のポーンを動かさずに黒駒を取り行く方法として、b1やg1の白ナイト(wSb1, wSg1)を活用するのが有力そうです。


h7の黒ポーン(bPh7)に近いのはg1の白ナイトです。
白だけが一方的に指せるとすると、例えば1.Sh3~2.Sg5~3.Sxh7とすればh7の黒ポーン(bPh7)を取れます。

ただ、h7の黒ポーン(bPh7)を取るまでに白は3手かかっています。
h7の白ナイトをg1の地点に戻すのに同じく3手かかるので、指定手数の4.0手を超えてしまいます。

手段がないようですが、ここで本作にはCirceルールがあることにご注目。
取られた駒(キングを除く)は実戦での指し始め位置に再生するというルールです。
出題図で動いていないように見える駒でも、このルールによって「実は動いていた」という展開が有り得るわけです。

正解手順を早速見ていきましょう。
白の1手目は1.e4。

d1の白クイーン(wQd1)でh7の黒ポーン(bPh7)を取りに行こうというわけです。
2.Qh5~3.Qxh7が最短ルート。

4.Qh5~5.Qd1と普通に戻っていたのでは指定手数の4.0手を超えてしまいます。
白クイーンは3.Qxh7と指した後、黒駒に取らせてd1の地点に再生する必要があることが分かります。
また、動かしてしまったe4の白ポーン(wPe2)は直接e2の地点に戻ることができません。
やはりe4の白ポーン(wPe4)も黒駒に取らせる必要があります。

少し方針が立ってきたところで黒の1手目。
正解は1...Sf6です。

次にe4の白ポーン(wPe4)を取ってe2の地点に再生させることを狙った手です。
この黒ナイトはe4の白ポーンを取った後、3.Sf6~4.Sg8と指定手数ぴったりで元の地点に戻れます。

手を進めていきましょう。
白の2手目は予定通り2.Qh5。

次に3.Qxh7を狙っています。

続いて黒の2手目は2...Sxe4。
e4の白ポーン(wPe4)を取ります。

取られたe4の白ポーン(wPe4)は同じファイルの指し始め位置、つまりe2の地点に再生します(2...Sxe4(+wPe2))。

白の3手目は3.Qxh7。

ここでh7の黒ポーン(bPh7)は取られたので再生したいところです。
再生するとしたらh7の地点になりますが、そこには白クイーンがいます。
従って、取られたh7の黒ポーン(bPh7)は再生せずに通常の駒取りと同様に盤上から取り除かれます。

これでh7の黒ポーン(bPh7)を消去することに成功しました。
今h7にいる白クイーン(wQh7)をd1の地点に戻すことを考えなければなりません。
先に述べたように、この白クイーンは黒駒に取らせてd1の地点に再生するしかありません。
ただ、e4の黒ナイトもg8の地点に戻らなければならず、余計な手を指す余裕はありません。
3...Sf6~4...Sg8と黒ナイトを元の地点に戻す過程で、上手く白クイーンを取らせることができればよさそうです。

その解決手段が3...Sf6に4.Qg8。

次に4...Sxg8と黒ナイトを元いた地点に戻します。

このとき、取られた白クイーンは指し始め位置であるd1の地点に再生します(4...Sxg8(+wQd1))。

これで4.0手で指定局面に辿り着くことができました。

本作は実戦初形からh7の黒ポーンを消去するという設定。
設定自体は実にシンプルです。
しかし、4.0手という短い手数が厄介。
これを達成するためにd1の白クイーン(wQd2)・e2の白ポーン(wPe2)・g8の黒ナイト(bSg8)の三枚を動かすことになります。
動かないと思っていた駒が実は動いていたわけです。
そして、これらの駒の動きはCirceルールを利用して隠匿されています。
Circe + Proof game の面白さが端的に表現されている作品です。

3.Orthodox・Helpmate 解付き 解答

担当:駒井めい

① 川越敏司 作

#2

【 Mate in n (#n) 】
白から指し始め、黒がどのように応じてもn手以内で黒のキングを詰ます。
詰将棋と異なり、白に王手義務はない。

〔 解答 〕
1.Kf1!
1...Kf3 2.Bd1#
1...Kf5 2.Sf2#
1...Kh3 2.Qh4#
1... Kh5 2.Qg5#

② 川越敏司 作

#2

〔 解答 〕
1.Qb8! (threat: 2.Qf4#)
1...Be5 2.Qb1#
1...e5 2.Qc8#

③ 川越敏司 作

#2*

〔 解答 〕
1...Sa6 2.Bd7#

1. Bb7! (threat: 2.Sc4/Sc6/Sd3/Sd7/Sf3/Sf7/Sg4/Sg6#)
1...Sa6 2.Bc6#
1...Sc6 2.Sxc6#
1...Sd7 2.Sxd7#
1...Sf7 2.Sxf7#
1...Sg6 2.Sxg6#
1...Bc4 2.Sxc4#
1...Bd3 2.Sxd3#
1...Bg2 2.Sf3#
1...Bh3 2.Sg4#

④ 川越敏司 作

#3 v

〔 解答 〕
1.Re4? (threat: 2.Re8#)
but 1... Be7!

1.Kb5! (threat: 2.Ra8#)
1...Ba7 2.Re4 Kb8 3.Re8#
1...Kb8 2.Kxc5 Kc8 3.Ra8#

■ 短評募集(再掲)
作品に対する短評を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
締切:2023年1月5日

■ 作品募集(再掲)
次回の出題は2023年2月号を予定しています。
チェス・プロブレム作品を募集します。
但し、OrthodoxとHelpmateに限らせていただきます。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2023年1月30日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

4.掲載記事の募集

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