めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2022年11月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

シナトラ氏が担当するシナトラセレクションですが、2022年10月号の第8回をもって連載終了といたします。
これまでご愛読いただき誠にありがとうございました。

1.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

① 飯田岳一 作
詰パラ 1975年12月
詰将棋 5手

55角、35玉、46角、44玉、24角 迄5手。

攻方35歩がいなければ24角迄。
4手進めると初形から攻方35歩が消えた局面が出現します。

邪魔な攻方歩を受方に消去させます。
5手目24角迄で詰め上がり。

ポイントは初手55角。
攻方65龍の横利きを遮る手です。

攻方がいくら攻方35歩を消去したいからと言って、強力な龍の利きを遮る手が正解なのは少し不思議に思えます。
例えば、初手37角などと別の地点に角を動かすとどうでしょうか。
これは2手目33玉と逃げられて詰みません。

33の地点に逃げられるのが厄介なのです。
これを防ぐ手段が初手55角というわけです。

対して2手目35玉と逃げるしかありません。

これで攻方35歩が消去できました。

次の疑問は何故3手目は46角と元の位置に戻らなければならないのか。

両王手をするなら3手目44角もあります。
しかし、これは4手目24玉と逃げられて詰みません。

24玉と逃げる手を防ぐために、代えて3手目33角成とする手も有効そうです。

今度は4手目55歩合と受けられて詰みません。

従って、
・55の地点に合駒をされる
・24の地点に逃げられる
という二つの筋を防ぐ必要があります。
この解決手段が3手目46角の両王手というわけです。

対して4手目は44玉と逃げる一手。

結果的に初形から攻方35歩が消去されました。

本作の鑑賞ポイントをまとめます。
初手55角は攻方龍の利きを遮りながら攻方香の利きを通す手。
3手目46角は逆に攻方香の利きを遮りながら攻方龍の利きを通す手です。
しかも、攻方角が往復して元の地点に戻っていて、4手目の局面を見てみると初形から攻方35歩が消去されただけの状況になっています。
微小な局面変化とそこに至るまでの手順が相まって、不思議な印象を強めています。
この手順が成立しているのは、角の利きを活かして玉を逃がさないようにするためというシンプルな理屈によるものです。

また、盤面8枚という少ない駒数で構成されているのが見逃せないところ。
これは「邪魔な攻方歩が消去された」ことに対するインパクトを強くしています。
この洗練された配置が本作を支える重要な要素と言えるでしょう。

② 會場健大 作
WFP 2015年5月
協力自玉詰 6手 ※透明駒:攻方2枚、受方2枚

出題:WFP第83号、結果発表:WFP第86号
ビューアで鑑賞:http://k7ro.sakura.ne.jp/jTMLView/TMLView.html?../wfp/wfp73-10.xml

【 協力自玉詰 】
先後協力して最短手数で攻方の王を詰める。
【 透明駒 】
位置・種類が不明の駒。着手の合法性、攻方王手義務を満たせる可能性があれば、それを満たしているものとして手順を進めることができる。
→参照:WFP第83号「透明駒の紹介」

X、98飛、X、X、78龍、同飛成 迄6手。

自玉詰なので攻方王を詰ますのが目的です。
攻方には王手義務があるので、攻方は受方玉に対して必ず王手をしなければなりません。
攻方は受方玉に王手をしながら、攻方王を詰ますことを考えて指していきます。
協力ルールがあるので、受方は攻方王を詰ますのに協力してくれます。

ただ、受方玉と攻方王が初形の盤面に見当たりません。
一体どういうことなのでしょうか。
これは透明駒と呼ばれる変則駒(フェアリー駒)のせいです。
透明駒は位置や種類が不明な駒のことです。
攻方には2枚、受方には2枚の透明駒があるというのが本作の設定です。
位置については盤上にいる可能性もありますが、駒台という可能性も有り得ます。
正体不明な駒が計4枚もあったら絶望的かもしれません。
しかし、そのうち2枚については種類が確定しています。
攻方2枚の透明駒のうち1枚は攻方王、受方2枚の透明駒のうち1枚は受方玉です。
透明な攻方王および受方玉は位置については不明ですが、少なくとも駒台ではなく盤上にいます。
そうでないと協力自玉詰というルールにおいて合法な局面になりません。
最終的な目的は透明な攻方王が詰んでいると証明することです。
そのようなことが果たして可能なのでしょうか?

正解手順を早速追っていきます。
初手の正解はX。
「X」は透明駒の着手をしたことを表しています。
攻方には王手義務があるので、攻方の透明駒を着手して受方玉に王手をかけたという事実は確定します。
ただ、位置や種類が不明な駒なので、何の駒をどこに着手したのかは不明です。
受方玉も見えないので、この状況では「位置が不明な受方玉に対して、攻方が正体不明の駒を着手して王手をかけた」というほぼ情報皆無の事実しか確定しません。
攻方が「私は11飛と打ったつもりだ」と言っても、この事実は証明されていないので、その主張は通りません。
初手から絶望的に思えますが、次の2手目から少しずつ明らかになっていきます。

2手目の正解は98飛。
これは透明駒ではなく普通の駒です。
受方が盤上から動かした可能性はなく、駒台から打った状況しか有り得ません。
当然これは王手を解除した手のはずです。
合駒を打って受けた状況しか有り得ないのが分かるでしょうか。
これで99の地点に透明な攻方香、91~97の地点のどこかに透明な受方玉がいることが判明します。

99の地点にいるのは飛車でもよさそうです。
しかし、飛車は品切れなので香車しか有り得ません。
攻方2枚の透明駒のうち1枚は香車だったというわけです。
これで攻方99香は存在が確定しました。
以後は透明駒ではなく普通の駒として振舞います。

続いて3手目はX。
攻方は再び透明駒の着手をしました。
攻方には王手義務があるので、王手にはなっているはず。
初手と同様に何の駒をどこに着手したのか不明です。

ところで、この透明駒はどこから来たのでしょうか?
「攻方99香は透明駒なんだから、98香と受方の飛車を取ったんでしょ?」と思った人は間違いです。
攻方99香は先程述べたように既に透明性を失っています。
98香と指したなら「3手目X」ではなく「3手目同香」と書かなければなりません。

攻方の透明駒が2枚あることを思い出した人は、「もう一枚の透明を使ったんだ!」と思ったかもしれません。
これも間違いです。
最初に述べたようにもう一枚の攻方透明駒は王のはずです。
攻方王自身で受方玉に王手をするのは反則です。

攻方王を動かして開王手した可能性はどうでしょうか。
例えば、透明な攻方王を動かして攻方18龍の利きを通すことで開王手したと考えます。
これなら確かに3手目の着手は「X」となります。

しかし、これで受方玉に王手がかかったのなら、受方玉は48~88の地点のどこかにいなければなりません。
2手目98飛の着手で受方玉は91~97の地点にいることが判明したはずです。
これでは話が矛盾してしまいます。

透明な攻方王を動かして透明な角香(飛は品切れ)の利きを通すことで開王手をしたという可能性はどうでしょうか。

この状況は攻方の透明駒が「2枚」ではなく「3枚」という設定でなければ成立しません。

では、「3手目X」という第3の攻方透明駒はどこから来たのでしょうか?
2手目98飛迄の局面で攻方99香が可視化されたので、「初手X」は「初手99香」だったと思い込んだ人が多いに違いありません。
この思い込みが間違いの原因。
初手で透明な攻方王を動かして透明な攻方99香の利きを通すことで開王手をした可能性もあるのです。
このとき、受方の透明駒を攻方王で取ったと考えれば、「3枚目の攻方透明駒」が手に入ります。

逆に言えば「3手目X」と第3の攻方透明駒が登場したことで、「初手で透明な攻方王が受方の透明駒を取りながら開王手をした」ということが判明するわけです。
ここで注意してもらいたいのは、上図はあくまで可能性の一つであること。
まだ攻方王や受方玉の位置は判明していませんし、初手で何の種類の駒を取ったのかも判明していません。
とにかくこれで受方の透明駒は2枚だったのが1枚になったので、受方の透明駒は受方玉だけになりました。

話を戻して2手目98飛迄の局面。

3手目はXでした。
これは元々は受方の透明駒で、初手に攻方王が取ったものです。
駒の位置や種類は不明のままです。
4手目の正解はX。
「また透明駒の着手か…」とげんなりするのは軽率です。
この時点で受方の透明駒は受方玉だけのはず。
4手目は透明な受方玉を動かした可能性しか有り得ません。
9筋(91~97の地点)から別の9筋のどこか(91~97の地点)に動いたかもしれないですし、8筋(81~87の地点)に動いたかもしれません。
移動先は不明ですが限られてはいます。

5手目は78龍。

攻方には王手義務があるので、受方玉に王手がかかっているはず。
受方玉は8筋(81~87の地点)か9筋(91~97の地点)にいると分かっているので、これで受方玉の位置が判明します。
5手目78龍迄の局面で受方玉は87の地点にいることが分かります。

これで4手目Xは87玉と透明な受方玉を9筋から8筋へ動かす着手だったと判明しました。

これまでの情報から4手目X(=87玉)と指す前に受方玉がどこにいたかも分かりそうです。
受方玉は元々91~97の地点にいたはずなので、候補は96か97の地点に絞られます。
このうち受方玉が97の地点にいた可能性は有り得ません。
初手で透明な攻方王を動かして開王手したことが分かっているので、初形で攻方王は9筋にいたはずです。
透明な受方玉が97の地点にいたなら透明な攻方王は98の地点に配置しなければなりません。

これでは攻方手番で既に受方玉に王手がかかっている状況になってしまい有り得ません。
従って、初形では透明な受方玉は96の地点にいたことになり、自動的に透明な攻方王は98の地点にいたと判明します。

詰手順をおさらいすると、初手からX、98飛、X、X(=87玉)、78龍と進めるのでした。
4手目に透明な受方玉を87玉と動かしたことは分かっているので、初手Xは89王と判明します。

初手は透明な攻方王で透明な受方駒を取ったと分かっているので、初形で89の地点に透明な受方駒がいたことになります。
このとき何の種類の駒を取ったかまでは分かりませんし、それを3手目でどこに打ったのかも分かりません。
次で最終手なので話を進めてみましょう。

6手目は78同飛成。

これで攻方王が詰んでいたことが証明できていそうですが、気になるのが3手目に打った透明駒。
5手目の局面で盤上に残っているかもしれません。
これで攻方王への王手を解除できる可能性が残るなら詰んでいません。
初手で取った透明な受方駒の候補は歩・香・桂・銀・金・角(飛は品切れ)。
歩・香・桂は生駒のままでは89の地点に置けませんが、成駒であれば可能です。
一つだけ有り得ない駒が桂です。
もし初手で取ったのが桂だったのなら初形はこんな感じだったはず。

初形からX(=89王)、98飛、X(=88桂)、X(=87玉)、78龍、同飛成と進めるとおかしなことが起こっていると気付きます。
5手目78龍の局面で次の6手目は同飛成ですが、透明な攻方88桂を飛び越して着手したことになってしまいます。

これは非合法な着手です。
6手目78同飛成と指したことでこの手が合法手であったと証明されるので、この展開は可能性から除外されます。
従って、初手で取った透明な受方駒の候補は歩・香・銀・金・角に絞られます。
結局駒の種類は判明しないのですが、ここでは透明駒を特定するのが目的ではないので問題ありません。
最後に攻方王が詰んでいることを証明できればよいのです。
3手目で歩・香・銀・金・角のいずれかをどこに打ったとしても、6手目78同龍と攻方王に王手する手を解除できません。

判明した情報を追加しながら初形と詰手順をおさらいしておきましょう。
初形はこんな感じ。

このとき、何の駒かは分かりませんが、89の地点に受方の透明駒がいたはずです。
ここからX(=89王)、98飛、X、X(=87玉)、78龍、同飛成と進めて攻方王が詰みました。

詰上図で3手目に打った攻方の透明駒が盤上に残っている可能性があります。
しかし、この局面で攻方王が詰んでいることは証明できるので、透明駒の種類や位置を完全に特定できなくても問題ありません。

本作は攻方王を透明駒にした自玉詰という難解な設定ですが、緻密なロジックで驚くべき解が浮かび上がってくる作品です。
たった一枚の初形からこんなにも奥深い世界が広がっていようとは、誰が予想できたでしょうか。

③ Atsuo Hara 作
Die Schwalbe 2008年 2nd Prize

Helpstalemate in 2 2 solutions

結果発表:Die Schwalbe 2008年12月号(第234号)
ビューアで鑑賞:https://yacpdb.org/#403198

【 Helpstalemate in n (H=n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒をステイルメイト(チェックはかかっていないが合法手のない状態)にする。もしnが半整数なら白から指し始める。
詰将棋と異なり白に王手義務はない。

1) 1.Qg8 fxg8=B 2.Sxd5 Bxd5=
2) 1.Se8 fxe8=R 2.Qxe4 Rxe4=
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

チェスの対局では白が先手ですが、このルール設定では基本的に黒から指し始めます。
黒をステイルメイト、つまりチェックはかかっていないが合法手のない状態にするのが最終目的です。
白が黒をステイルメイトにしようと指していくわけですが、Helpルールが付いているので黒も自身がステイルメイトになるように協力して指します。
詰将棋と違って白に王手義務はないことに注意してください。

黒をステイルメイトにするためにどういう方針で指したらいいでしょうか。
まずは初形の盤面を見てみましょう。

f5の黒キング(bKf5)は動けば自身にチェックがかかってしまうので身動きが取れません。
d6の黒ポーン(bPd6)はd5の白ビショップ(wBd5)が移動先を塞いでいます。
c7の黒ナイト(bSc7)・f6の黒ナイト(bSf6)・g2の黒クイーン(bQg2)は自由に動ける状態です。
駒の移動性を失わせるためには、捨てるなどして盤面から消去するのが一番シンプルでしょう。
他には、クイーン・ルーク・ビショップといった線駒でピンするなどの方法もあります。

それでは正解手順を見ていきます。
「2 solutions」とあるので正解手順は2つです。
1解目では1.Qg8 fxg8=?と指します。


g2の黒クイーン(bQg2)をg8の地点に動かして、f7の白ポーン(wPf7)に取らせます。
黒クイーンを消去できただけでなく、f6の黒ナイト(bSf6)をピンできて一石二鳥です。
f8の白ルーク(wRf8)の利きが通ったことで、f6の黒ナイト(bSf6)は動こうとしても黒キングにチェックがかかってしまう状況です。
白の1手目でf7の白ポーン(wPf7)をg8に動かした(1...fxg8)ので、クイーン・ナイト・ビショップ・ルークのどれかにプロモーションする必要があります。
実戦なら最も強い性能のクイーンにプロモーションする場合がほとんどです。
今はステイルメイトにするのが目的なので、強い駒に成ればいいという問題でもありません。
g8の白ポーンがプロモーションしなければ着手は完了しません。
しかし、これを一旦保留した局面で先の展開を考えてみます。


c7の黒ナイト(bSc7)がまだ合法手を指せる状態です。
これをなんとかしなければなりません。
やはり捨てて消去してしまうのが一番シンプルです。
しかし、白駒を動かしにくいのが分かるでしょうか。
例えば、2.Se6 Rxe6とe4の白ルーク(wRe4)に取らせます。

これは3.Kf4と黒キングを動かすことが可能になってしまいます。
c7の黒ナイト(bSc7)を白の駒に取らせて消去する方法は他にもいくつかありますが、いずれも白駒が動くことでステイルメイトが達成できません。
白駒の配置はこの状態から変えたくないわけです。

白駒を動かせないので困ったようですが、ここで意表を突く手が正解となります。
黒の2手目は2.Sxd5が正解。
なんと逆に白駒を取ってしまいます。

e4の白ルーク(wRe4)を支える駒がなくなってしまいました。
ステイルメイトからより遠ざかったように見えます。
ここで白の1手目1...fxg8=?を思い出してください。
何の駒にプロモーションするか結論を保留していました。
1...fxg8=Bとビショップを選んでいれば全て解決します。

白の2手目で2...Bxd5とd5の地点に白ビショップを復元すると、ついでにd5にいた黒ナイト(bSd5)も消去されます。

白が指して手番は黒に移りました。
この局面で黒の合法手はありません。
ステイルメイトが達成されていることが分かります。

解はもう一つあるので見ていきましょう。
初形図を再掲します。

方針は同じ。
f7の白ポーン(wPf7)に黒駒を取らせて動かし、f6の黒ナイト(bSf6)をピンします。
1解目は1.Qg8と黒クイーンを捨てましたが、今度は1.Se8とc7の黒ナイト(bSc7)を捨てる手が見えてきたでしょうか。

これには1...fxe8=?と応じるわけですが、今度は何の駒にプロモーションしたらよいでしょうか。

やはりこの局面だけ睨んでいても分からないので、次の手を考えてみます。

1解目との違いはc7の黒ナイト(bSc7)が消去された代わりに、g2の黒クイーン(bQg2)が残っていること。
g2の黒クイーン(bQg2)が自由に動ける状況です。
これを白駒に取らせて消去することを考えても、1解目と同様に白駒を動かしにくいことが分かります。
1解目では白駒を取るという意表を突く解決手段でした。
2解目でもやはりそうです。
黒の2手目は2.Qxe4とe4の白ルーク(wRe4)を取ってしまいます。

1解目を見ているので、もうお分かりでしょう。
ここで白の1手目で1...fxe8=Rとルークにプロモーションしていれば解決します。

最後は2...Rxe4とe4の地点に白ルークを復元しながら、e4の黒クイーン(bQe4)を消去してステイルメイトの達成です。

過程が異なるのに最終図が1解目と同じというのが面白いところです。

初形図を再掲します。

本作はc7の黒ナイト(bSc7)とg2の黒クイーン(bQg2)の消去の仕方がポイント。
結局どちらもf7の白ポーン(wPf7)に取らせます。
一方はポーンに取らせ、もう一方はプロモーションした後に取らせます。
このとき、2.Sxd5/Qxe4と白駒を取る展開は、局所的に見ればステイルメイトから遠ざかっているように見えるので意外性があります。
2...Bxd5/Rxe4=と取られた白駒が同地点に復元するわけですが、そのために1...fxg8=B/fxe8=Rと事前にプロモーションする駒の種類を決めておくのも、Help playを活かした面白い手順です。
最終形は初形から3枚の駒が消えた局面になっていて、ステイルメイトが達成されたことが明快に伝わるのも嬉しいところ。

ちなみに、d6の黒ポーン(bPd6)は何の役に立っているか分からないかもしれません。
これは1.Qa2 Bxa2 2.Se8 fxe8=Q=などd5の白ビショップ(wBd5)を動かす手順を消しています。
d5の白ビショップ(wBd5)が動くと、d6の黒ポーン(bPd6)が動けるようになります。
これでステイルメイトが達成できなくなるので、複数ある別解(Cook)が全て消えてくれているという仕組みです。

2.Orthodox・Helpmate 解付き 解説

担当:駒井めい

2022年10月号で解付き出題した自作の解説を行います。
短評も募集していましたが、残念ながらありませんでした。

① 駒井めい 作

H#2 2 solutions

【 Helpmate in n (H#n) 】
黒から指し始め、黒白協力してn手(最短手数)で黒のキングを詰ます。もしnが半整数なら、白から指し始める。
詰将棋と異なり白に王手義務はない。

〔 解答 〕
1.Rb4 Qh5 2.Rb7 Qe8#
1.Rh7 Qa1 2.Rd7 Qa8#

↓ 1解目

↓ 2解目

〔 解説 〕
h4の黒ルーク(bRh4)を動かして退路を封鎖し、h8の白クイーン(wQh8)を動かしてメイトします。
1解目ではh4の黒ルーク(bRh4)をb7の地点まで移動させ、h8の白クイーン(wQh8)をe8の地点まで移動させます。
このとき、黒ルークの移動経路はh4→b4→b7、白クイーンの移動経路はh8→h5→e8と定まります。

2解目ではh4の黒ルーク(bRh4)をd7の地点まで移動させ、h8の白クイーン(wQh8)をa8の地点まで移動させます。
白クイーンの移動経路はh8→a1→a8が有力ですが、問題は黒ルークの移動経路。
h4→d4→d7とh4→h7→d7という二つの移動経路が考えられます。
しかし、1.Rd4?とすると黒ルークが邪魔で1...Qa1ができなくなってしまいます。
白クイーンの移動経路を邪魔しないように1.Rh7~2.Rd7とするのが正解。

本作は2解で似た最終形ですが、白クイーンと黒ルークの移動する向きが特徴的な作品です。
白クイーンは1解目では縦→斜め、2解目では斜め→縦と動きます。
黒ルークは1解目では横→縦、2解目では縦→横と動きます。
駒の動く向きの対比が本作の狙いでした。

■ 作品募集
次回の出題は2022年12月号を予定しています。
チェス・プロブレム作品を募集します。
但し、OrthodoxとHelpmateに限らせていただきます。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2022年11月30日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

3.掲載記事の募集

詰将棋やチェス・プロブレムに関する記事を執筆してくださる方を募集しています。
内容は論考、作品紹介、入門、詰棋書紹介、宣伝など何でも構いません。
単発・連載どちらでも受け付けます。
字数制限は特にありません。
原稿を編集長の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume