めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2021年12月号

この度、詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが、フリーダムに作品や情報を取り上げるWebマガジン「めいまが」を立ち上げました。

【 改訂 】
・P. Wang作においてPlus-flightの解説が抜けていたので追記しました。(2021年12月10日)

1.編集長のおすすめ作品

青木裕一作 詰将棋つくってみた 課題11 2021年11月1日
詰将棋 3手

1) 26銀、16玉、13龍 迄3手。
2) 26銀、14玉、23龍 迄3手。
3) 26銀、36玉、33龍 迄3手。
4) 26銀、34玉、43龍 迄3手。

初手26銀に玉の逃げ方は斜め4箇所です。
それぞれの逃げ方に対して龍が異なる地点に着手して詰みます。
龍の4地点着手とチェス・プロブレムのStar-flights※1を組み合わせた意欲作です。
詰将棋らしくない変わった雰囲気の作品ですが、こういう挑戦的な作品は編集長の大好物です。

※1 King's star theme [1]:
The black King visits all four diagonal flight squares※2.
≡Alias: Star Flights.
※2 Flight square [1]:
A square to which the black King can legally move (that is, one not guarded by a white piece, and not occupied by a black piece).
[1] M. Velimirovic and K. Valtonen: "Encyclopedia Of Chess Problems -Themes And Terms-" (2012)

② P. Wong作 feenschach 1995年 1st HM

f:id:MeiKomai:20211210120116p:plain
Helpmate in 2
b)d3→d7, c)d3→a7, d)d3→b3

a) 1.Qe3 Kh2 2.Kd4 Sxe6#
b) 1.Se7 Kg3 2.Kd6 Se8#
c) 1.Rb7 Kg1 2.Kb6 Sa8#
d) 1.Ra3 Kxf2 2.Kb4 Sxa6#
※ナイト(Knight)の棋譜表記は通常「N」ですが、チェス・プロブレムでは「S」と表します。

せっかくなので、Star-flightsをテーマにしたチェス・プロブレムも取り上げておきます。
「黒から指し始めて、黒と白が協力し合って2手で黒キングを詰ます」という問題設定です。
「b)d3→d7」はツイン(Twin)と呼ばれる問題設定で、この場合は「出題図に対してd3のポーンをd7に移動させた図で同様に解け」という意味になります。
つまり、配置が若干異なる4つの図を解く作品です。

黒の2手目でキングが斜め4箇所のいずれかに逃げるのが最初の鑑賞ポイントです。
ツインで4箇所全てが網羅されていて、Star-flightsが実現されています。
白の2手目でc7のナイトを動かして詰ましますが、これに備えて黒の1手目で将来的に退路となり得る地点を塞いでおきます(Distant self-block※3)。
このとき白の1手目で何を指すかに困ります。
白キングを動かして手待ち(Wating tempo move※4)をするのが正解です。
初形では白キングは動けませんが、黒の1手目である地点の利きが外れることで可能になった手です。
例えばa)で1.Kd4とすぐに詰まされる地点に黒キングを移動させると、1...Kh2などの手待ちができずに失敗します。
手順前後が成立しないロジックも見事です。
また、白キングは縦横4箇所(Plus-flight※5)に動き、黒キングの斜め4箇所の動きと対照的になっています。

※3 Self-block [2]:
A piece moves to the square in its own king's field and blocks him. The opposite side takes advantage of it.
Distant self-block is a spacial case of a self-block when the blocked square lies outside the king's immediate field. 
※4 Wating tempo move [2]:
A move can be skipped without affecting the next play.
※5 Plus-flight [1]:
Essentially same as King's Cross theme※6, i.e. King's moves to all four adjacent orthogonal/lateral squares. The term "plus-flight" refers directly to the flight-squares that are avaliable to the King, whereas King's Cross may denote the King's moves in general.
※6 King's Cross theme [1]:
King makes ap move to all four adjacent vertical/lateral squares.
≡Alias: Cross Pattern; Cross-Flight.
[1] M. Velimirovic and K. Valtonen: "Encyclopedia Of Chess Problems -Themes And Terms-" (2012)
[2] Helpmate Analyzer, Glossary of helpmate themes and terms, 
http://helpman.komtera.lt/themes.html

2.フェアリー入門

協力詰 2手(受先)

【 協力詰 】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。
【 受先 】
受方から指し始める。

普通の詰将棋として考えると、到底詰みそうにありません。
不詰でしょうか?
「協力詰」と書かれているのにご注目ください。
普通の詰将棋では受方は詰まされないように抵抗します。
しかし、協力詰では受方は自ら詰まされるような手を指します。
また、普通の詰将棋では攻方から指し始めますが、今回は「受先」なので受方から指し始めます。
つまり、最初に受方が自ら詰まされるような手を指して、次に攻方が詰まします。
正解は…

32飛、13飛成 迄2手。

受方玉を詰ますには攻方23飛を動かすしかなさそうですが、角に睨まれていて動けません。
この角を初手で52などに動かして13飛成としても、同飛とされてしまいます。

受方41角・33飛の利きを同時になんとかしなければなりません。
これを解決するのが初手32飛です。

角の利きが遮断されて飛車の利きも逸れました。
これで13飛成とすれば詰め上がりです。

3.私の作品を見ろ!

【 既発表自作の募集 】
既発表の自作で紹介したい作品がありましたら是非ご投稿ください。
当コーナーで紹介させていただきます。
詰将棋(フェアリーも含む)だけでなくチェス・プロブレムも受け付けます。
編集長・駒井めいのTwitter@MeiKomai_Tsume)のDMに、下記の内容を送付してください。
(1) 作者名
(2) 発表場所、発表年月
(3) 作品図面
※ 改作図も可。その場合は改作図であることをお知らせください。
(4) 作意手順
(5) 狙いなどの作者コメント