めいまが

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン

めいまが 2023年4月号

詰将棋とチェス・プロブレム愛好家の駒井めいが編集長を務めるWebマガジン「めいまが」です。

1.Orthodox・Helpmate 解付き

担当:駒井めい

作品の投稿がなかったので、今回の出題はお休みします。
次回の出題は2023年6月号を予定しています。
作品を募集しますので、よろしくお願いします。

■ 作品募集
チェス・プロブレム作品を募集します。
但し、OrthodoxとHelpmateに限らせていただきます。
下記①~⑤の情報を担当の駒井めいまで送付してください。
・Eメールアドレス:meikomaivtsume[at]gmail.com
TwitterのDM:@MeiKomai_Tsume
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① 作者名(ペンネーム可)
② 作品図面
③ ルール、手数、ツインなどの出題条件
④ 作意解
⑤ 狙いなどの作者コメント(省略可)
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締切:2023年5月31日
※ 検討ソフトとしてOliveHelpmate Analyzerなどがあります。

2.編集長のおすすめ作品

担当:駒井めい

springs
詰将棋メーカー 2023年2月26日
詰将棋 9手

出題・解答:安全ナイフ | 𝔰𝔭𝔯𝔦𝔫𝔤𝔰 | 詰将棋メーカー

(A)46桂、(イ)同飛不成、43飛成、同飛、
35歩、同玉、36歩、34玉、16角
迄9手

(イ) 同飛成は35歩、同龍、43飛成迄。
(A) 43飛成は同飛成で逃れ。

受方玉に逃げ道はなく、初手35歩は打歩詰のため指せません。

36歩と控えて打って35歩の突歩詰を狙うのも厳しそうです。
攻方は飛角と大駒が二枚もあるので、これらを活用する方針を考えていきたいところです。

初形に戻ります。

受方玉が動けないので、初手16角は一瞬頭をよぎる手です。

しかし、攻方45飛に付いていた紐が外れています。
2手目45玉と攻方飛を取られて逃げられます。

初形に戻ります。

豪快に初手43飛成とするのはどうでしょう。

これは攻方飛を動かしてしまったことで、2手目35玉とかわされて詰みません。

ここではもう一つ逃れ筋があり、それは2手目43同飛”成”と逆王手をする手。

逃れ筋が二つもあって、到底詰みそうには見えません。
ただ、初形の受方47飛を35の地点まで動かすことができたらどうでしょうか。

この二つの逃れ筋を同時に消すことができて、43飛成と詰ますことができます。

初形に戻ります。

初手46桂と打つのが解決策。

2手目同飛成なら

35歩 同龍 43飛成と進めて詰み。

初手46桂とした局面に戻ります。

ここは攻方46桂を受方37飛で取るしか王手を解除する手段がありません。
ただ、2手目46同飛成以外にも手段はあります。
2手目は46同飛”不成”が最善。

2手目46同飛”成”のときには3手目35歩としました。
2手目46同飛”不成”とすると、3手目35歩が引き続き打歩詰になっているのです。

2手目46同飛不成の局面で何を指したらよいでしょうか。

攻方は角か飛で王手するしかありません。
3手目16角は攻方45飛が紐なしになって

4手目45玉と逃げられてしまいます。

2手目46同飛不成とした局面に戻ります。

3手目の正解は43飛成。

4手目35玉は

以下46龍 34玉 45龍と進んで7手駒余り。
これは作意より早く詰みます。

3手目43飛成とした局面に戻ります。

4手目は43同飛が最善。

初形から受方飛が一段ずれたために、4手目43同飛”成”とする手が消えています。
この理由は初手46桂に受方が2手目同飛”不成”と応じたからです。
受方は攻方に打歩詰の状態を保たせようとした結果ですが、作意だけ見ると受方が抵抗しているようには見えないのが不思議なところ。

さて、4手目同飛には5手目35歩が正解。

初形から攻方45飛が盤上から消えたことで、この歩打は打歩詰になっていません。
対して受方は6手目35同玉と応じるしかありません。

7手目36歩と歩を連打するのがポイント。

これには8手目35玉と受けるしかありません。

35の地点に利かせたことで、9手目16角すれば詰め上がりです。

まだ10手目25歩などと合駒をして受けられますが、

11手目同角と取って詰んでいます。

つまり、10手目に25の地点に合駒をする受けは無駄合となります。

初形に戻って手順をおさらいします。

正解手順は(A)46桂 (イ)同飛不成 43飛成 同飛 35歩 同玉 36歩 34玉 16角迄9手。
(イ) 2手目同飛成には35歩、同龍、43飛成迄。
(A) 初手43飛成は同飛成で逃れ。

本作は受方玉への打歩詰を巡る攻防の結果、攻方王への逆王手が回避されるという構成。
初手43飛成に2手目同飛成と逆王手をする紛れを意識すると、作意の初手46桂に2手目同飛不成の受けは、受方が抵抗しているようには見えない不思議な感触があります。
双玉における逆王手の表現として、非常に興味深く面白い作品です。

② 変寝夢 作
WFP 2013年8月
縦シリンダー盤協力詰 3手 ※通過成可

出題:WFP第62号(2013年8月号)
結果発表:WFP第64号(2013年10月号)
ビューアで鑑賞:http://k7ro.sakura.ne.jp/jTMLView/TMLView.html?../wfp/wfp55-3.xml

【 縦シリンダー盤 】
一段目と九段目の同じ筋同士が繋がった盤を使用する。 
(補足)
・可成地点を通過するだけで成れる「通過成可」のルールが付加される場合がある。 

【 協力詰 】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。
無駄合の概念はなく、合駒は全て有効。

91角、54玉、64飛成 迄3手

本作は縦シリンダー盤という特殊な盤が使われています。
例えば下図を見てください。

通常の盤なら攻方58香をどう動かしても、受方玉に王手をかける手段はありません。
縦シリンダー盤は上下が繋がった盤。
攻方香を58の地点から51の地点を超えて動かすと、59の地点に抜けられます。

このとき攻方香は受方陣(一・二・三段目)を通過します。
通過成可の条件では、59の地点に動かした攻方香を成ることができます。

それでは出題図を見てみます。

本作は普通の詰将棋ではなく協力詰です。
攻方からの王手に対して、受方は自玉が詰むように協力します。
それでも指定された詰手数は3手。
通常の盤ではどうやっても詰みません。
縦シリンダー盤を使ってどのように詰ますのでしょうか。

初手の正解は91角。

通常の盤ではこれは王手になっていませんが、縦シリンダー盤では王手です。
91の地点に打った角を、盤外の”80”の地点に動かそうとすれば、89の地点に抜けます。
そこから78→67→56→45と動くことができます。
攻方91角は45の地点に利いて、王手になっているわけです。

これには2手目54玉とかわします。

やはり通常の盤で考えると詰ます手段はありません。
縦シリンダー盤では3手目64飛”成”という手が可能になります。

通常の盤でも攻方66飛を64の地点に動かせますが、成ることはできません。
通過成可の縦シリンダー盤では攻方66飛を69の地点に向かって動かし、61の地点から抜けて64の地点に動かしたと解釈すれば、受方陣(一・二・三段目)を通過するので龍に成ることができます。
攻方66飛を61の地点に向かって動かし、69の地点から抜けたと解釈しても、同様に3手目64飛成を実現できます。

4手目45玉と逃げられそうですが、初手の角打を思い出してください。
45の地点には縦シリンダー盤の効果で攻方91角が利いています。
従って、3手目64飛成迄で詰め上がりです。

初形に戻って手順をおさらいします。

正解手順は91角、54玉、64飛成迄3手。

本作は縦シリンダー盤という変則盤を使った作品。
余計な要素を排除し、縦シリンダー盤の面白さがシンプルに表現されています。

③ Santi Pirrone 作
1st WCCT 1975年 8th Place

Selfmate in 2, b) Move wKc1 to d1

ビューアで鑑賞:https://yacpdb.org/#46777

【 Selfmate in n (S#n) 】
白から指し始め、白はn手以内で自身のキングを詰めるように指し、黒はそれを妨げるよう応じる。
詰将棋と異なり白にチェックする義務はない。

a) 1.Be1! bxc2 2.Bd2 exd2#
b) 1.Rc1! exd2 2.Rc2 bxc2#

通常のMate(Orthodox)では黒キングをメイトするのが白の目的ですが、Selfmateでは白キングをメイトするのが白の目的です。
対してSelfmateにおける黒は、通常のMateと同様に白の目的に抵抗します。
つまり、黒は白キングがメイトしないように指します。

初形を見てみます。

黒駒はキングを含めて6枚ありますが、合法的に動かせる駒はb3とe3の黒ポーンのみです。

もし黒が1...bxc2~2...exd2#としてくれれば、白キングがメイトします。

しかし、黒は白キングをメイトしないように抵抗するので、1...bxc2とは指してくれず、1...exd2+を先に指します。

白キングにチェックがかかっているので、白が2.Kd1と指せば、

黒は2...bxc2#と指すしかなく、白キングがメイトします。

これで良さそうですが、問題は白の1手目で何を指すか。
初形を見てみると、意外にも指す手がありません。

例えば、白が1.f4と指せばe4の地点への利きが外れて、1...Ke4とされてしまいます。

b3とe3の黒ポーンしか動けない状態を保つために、白の1手目で何を指せばよいでしょうか。

1.Kd1と指すのはどうでしょう。

黒が1...bxc2+と指してくれれば、

2.Kc1 exd2#と進んで白キングがメイトします。

しかし、1.Kd1の局面では

黒が1...bxc2+とは指してくれず、1...exd2と指されてしまいます。

この局面で白がパスをできればよいですが、やはり有効な手はありません。

初形に戻ります。

正解は1.Be1!。

この手の目的は黒に1...bxc2を強制すること。

d2の白ビショップが動いたことで、1...exd2+とは指せません。

これで2.Bd2と白ビショップを元の地点に戻せば、

黒は2...exd2#と指すしかなく、白キングがメイトします。

初形に戻って手順をおさらいします。

正解手順は1.Be1! bxc2 2.Bd2 exd2#。

続いてb図。
b図はc1の白キングをd1の地点に移動させたものです。

やはり黒が動かせる駒はb3とe3の黒ポーンのみ。

今度は黒が1...exd2~2...bxc2#としてくれれば、白キングがメイトします。

b図の初形に戻ります。

白の1手目は何を指せばよいでしょうか。
a図と同様に不用意に白駒を動かせば、白キングはメイトしません。
黒が動かせる駒をb3とe3の黒ポーンのみの状態に保つ必要があります。

では、1.Kc1はどうでしょう。

1...exd2+と指してくれれば、

2.Kd1 bxc2#で白キングがメイトします。

しかし、1.Kc1の局面で

1...cxd2+とは指してくれず、1...bxc2と指されてしまいます。

この局面で白がパスをできればよいですが、有効な手はありません。

b図の初形に戻ります。

正解は1.Rc1!。

この手の目的は黒に1...exd2を強制すること。

c2の白ルークが動いたことで、1...bxc2+とは指せません。

これで2.Rc2と白ルークを元の地点に戻せば、

黒は2...bxc2#と指すしかなく、白キングがメイトします。

b図の初形に戻って手順をおさらいします。

正解手順は1.Rc1! exd2 2.Rc2 bxc2#。

a図の手順もおさらいします。

a図の正解手順は1.Be1! bxc2 2.Bd2 exd2#。

本作では白キングの位置を微妙に変えることで、黒ポーンを動かす順番が変わるという対照的な手順が実現されています。
黒の手を強制するために、白ビショップあるいは白ルークを往復します。
手順のロジックが明快なので、納得感が大きい作品でしょう。

3.掲載記事の募集

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